黄昏のリレー小説第4部


第1話 (2003/09/20(Sat) 01:38)、tani
そこは病室を思わせる、ほぼ白一色の部屋だった。
あまり広く感じないのは、部屋いっぱいに
6つものベッドを敷き詰めていたせいだろう。
彼女・・・サニアはそのベッドで眠っていたらしかった。
「ここは・・・?」
起き上がって少しすると、今まで無かったのが嘘のように
激しい頭痛と吐き気、脱力感に襲われる。
トッシュに無理に酒を飲まされ、
2日酔いを起こした時を思い出させた。
「サニア様!!」
頭痛がつらい体には、その辺の騒音よりこたえる少年の高い声。
見ると、すぐそばに馴染みの顔がいた。
「ヨナン・・・。ここは、どこなの??」
『気が付いたかね?』
部屋のどこからともなく、スピーカー越しのような声が響く。
「・・・あなたは?」
『私は帝国の主を務めるダッカムという者だ。
 そこはメギスト内にある医務室だ。』
「・・・なるほど、交渉を持ちかけながら
 魔術か何かで私を眠らせ、拉致監禁、怪しいビデオに出演
 させて死なない程度に●●●を●●●●して●●●●●●
 なんて考えているのね。」
『・・・何故そんな怖い事をさらりと想像できるのかが
 理解できないのだが・・・。残念だが外れだ。精霊石の力と
 共に自分の魔力を使い果たし一時的に気絶してたんだ。』
「・・・だとしてなぜ私はここに?」
『交渉がまだだっただろう?私は君の力に興味があるのだ。
 精霊石は強すぎる力だ。弱い者なら手にしただけで
 精神くらいなら崩壊してしまう。
 ましてや正気を保ちながら力を使いこなすとなると、
 とてつもない精神力を使用する。
 君はとてつもない力を持っているようだ。
 帝国に雇われてみないか?働き次第では高い地位もやるぞ。』
「・・・いいでしょう」
「サニア様!??」
「問答無用で連れてくる辺り、断れば命は無いんでしょ?
 今の私に抵抗する力はないわ。精霊石も奪われてるみたいだし、
 交渉内容も悪くはないしね。」
(それに・・・)
サニアの頭の中に浮かぶ顔がひとつあった。
帝国と敵対する、怪しげな技を使う青年。
(あいつは必ず来るわ、それまで帝国内部を探るのも悪くないしね。)


一方カーグ達は帝国から数キロ離れた小島にいた。
ニーデリア高校帝国前線基地。
その中にある赤い絨毯の広い部屋。会議室で作戦説明をしていた。
カーグ「いいか、時間が無い。手短に話すぞ。
 俺達がいるのはこの島だ、そしてここが帝国。」
ボードに地図を貼り、説明してくる。
カーグ「空中からの進入は対空砲を食らう。
    いくらか手薄だろうがそれでも危険だ。
    陸からは言うまでも無く却下。
    兵士の数からして突入する前に援軍を呼ばれる。
    出来たとしてもかなりの時間を必要とするだろう。
    そこで、ここが一番手薄だと判断した。」
ポコ&ルッツ『・・・・・・』
カーグが指した所は帝国から少し離れた海岸沿いだった。
カーグ「ここは帝国の潜水艇が入るドッグにつながる洞窟がある。
    ニーデリアの誇る新型潜水艇を使えば恐らく大丈夫だろう
    そして侵入後、隠密行動にてコンピュータルームを制圧する。
    セキュリティも兼ねた部屋だ。制圧できれば帝国は
    機能のほとんどを停止する。残る問題は精霊石とダッカムだけ。
    ここで2手に分かれてそれぞれで作戦を行う。
    俺はダッカムを倒す。精霊石はお前らに任せる。質問は?」
ポコ「ね、ねぇ。どうしちゃったの??」
カーグ「・・・何がだ?」
ルッツ「いや、いつに無く真面目な話だったからさ。
    今までの、ガンガン進む、って感じからも意外で・・・。
    それに、これ・・・」
ルッツの見た先はニーデリア高校の基地の内部だった。
会議室のガラスの向こうに見たことも無い精密機器が並んでいる。
それだけではない、恐ろしい人数がまさしく軍隊以上といって良いほどの
訓練を行っている。
大道芸が大多数を占めているのが気にはなったが・・・。
ポコ「ニーデリア高校っていうと、
   さっき見たのもあんなだったからさぁ・・・」
ルッツ「うんうん、今度はどんなお化け屋敷か掘っ建て小屋かと
    想像してたんだよなぁ・・・」
カーグ「訓練については前に少し話したはずだが。
    さっきのはもう基地としての機能を捨てた場所だからな。」
ポコ「え?どういう事?」
カーグ「この前線基地にほぼ全ての技術を集結させているんだよ。」
ルッツ「・・・で?なんの為に??」
カーグ「・・・これは口外禁止なんだが・・・。
    俺達の作戦の精霊石の処理が終わり次第、
    帝国対ニーデリア高校の全面戦争が始まるんだ。」
ルッツ「そんな大事を前にしてちょっと質問したいんだけど・・・」
カーグ「ん?なんだ??」
ルッツ「この作戦って、脱出どうするんだ??」
カーグ「・・・・・・・・・・・・」
ポコ「考えてなかったみたいね・・・」
ルッツ「良くないけど、いつものカーグだったな。」(続く)
第2話 (2003/09/21(Sun) 21:45)、ファア
カーグ「ま、まぁ脱出は敵の・・。」
コンコンコン!!(ドアをノックする音)
カーグ「誰だ?」
ポーレット「私です・・。」
カーグ「ポーレット、今までどこに行ってたんだ?」
ポーレット「私にも分かりません、急に背中にパラシュートをつけた男の人が飛んできてそれに巻き込まれたんです。」
ポコ「・・・・。」
カーグ「その男は・・、それにサニアは・・?」
ポーレット「はい、頭に来たので気絶させました。サニアさんは自分で行動するとかいってどこかに行きました。」
ポコ「・・・・(エルクかわいそ〜)。」
カーグ「まぁ、君だけでも無事に戻ってきただけでも何よりだ(うるさい奴がいなくなってよかった)。今、帝国襲撃の作戦を立てているんだ。で、話を戻すと脱出は敵の戦闘機を奪うとかで大丈夫だと思うんだけど・・。」
ポコ「そんなんで本当に大丈夫かなぁ?」
ルッツ「何か泥棒みたいで嫌だぜぇ・・。」
ポーレット「あなたが言っても説得力ありません!なんでやねん!!」
ペシッ(ルッツの頭をハリセンで叩いた)!
ルッツ「アウッ!!」
カーグ「大丈夫だ!!俺にはこの無敵のテコンドーがある!どんな相手でも負けない!!」
ルッツ「また熱血モードかよぉ・・!?」
ポーレット「大丈夫です。実はここに来るまであの人に会って雇っておきました。わが高校の秘密兵器のあの人を・・。」
カーグ「あ、あの男を・・!!しかしあいつは甲子園での場外乱闘以来停学に・・。」
ポーレット「この抗争のおかげでほとぼりが冷めたようです。」
ルッツ「何でも有りなのかよ・・。」
ポーレット「彼にはこの作戦内容を見た限り、カーグ部長の援護が適役ですね。」
ゴン!ゴン!ゴン!(ひびが入りそうなぐらいのノック)
ポーレット「来たようです・・。」

帝国襲撃に燃えるカーグ、サポートするポーレット、突っ込まれるルッツ、怖じ気づきエルクの心配をするポコ。そして秘密兵器のあの男とは・・!!(続く)

第3話 (2003/09/21(Sun) 14:29)、tani
そいつは、筋肉隆々ののっぺりした顔の大男だった。
まるっきり無表情・・・と言うよりまったくこちらの話が通じていないかのような様子だった。
カーグ「相変わらずバカみたいな面してるな。」
大男「ううっす。」
カーグ「状況は聞いていたのか?」
大男「ううっす。」
まるっきり虚空を見つめながら、大男はさっきと同じ返事をした。
カーグ「・・・おまえの高校での成績って確かトップクラスだったよな?」
大男「ううっす。」
カーグ「・・・頭を掻いてみろ。」
大男「ううっす。」
自分の頭をそれこそ力いっぱいに引き裂くように掻いて見せた。
やはり力が強かったらしく、血がだだーっと溢れ出てくる。
カーグ「・・・やっぱこいつはダメだって。」
ポーレット「そ、そんな事はありません!きっと何かの役に!」
カーグ「今回の作戦は主に隠密行動だ。人数はかえって少ない方が
    見つからんだろう。この4人の方が良い。」(続く)
第4話 (2003/09/24(Wed) 18:32)、智幸
作戦会議はひとまず休憩・・・ルッツとポコはニーデリア高校前線基地の訓練を見学をすることにした。

ルッツ「本当にここの生徒って軍隊と比べ物にならないくらいすごい訓練してるよなぁ・・・
    みろよ、あっちなんか両手の小指だけで歩く訓練だぜ」
ポコ「あっちもすごいよ。たまのりしながら片足で立って、
   さらに50個の火のついたフラフープを自在にまわしてるよ」
ルッツ「あそこのひげオヤジなんか壺からいろんなモンスター出して・・・って・・・?????」
ポコ「・・・・・みなかったことにしよう・・・」
そして2人はなにも見なかったということで基地内の廊下を進んで行く。

そしてひとつの、豪華に装飾された部屋へと入っていった。
ポコ「なんかここだけ雰囲気が違うね」
ルッツ「ああ、誰か重要な人の部屋なんだろう」
そこには大量のビールの缶、焼酎のビン、ワインの樽が転がっていた。
ポコ「・・・これは何?」
ルッツ「・・・なにかの訓練のひとつとして行ったものか、
    それともただの大酒のみがここで呑んだくれてただけか・・・」
ポコ「まさかトッシュ?いや、でもそうだとすると日本酒のはずだから違うか」
???「そこで何をしている!」
ポコ&ルッツ「?!」
そこにいたのはなんと・・・

つづく・・・
第5話 (2003/09/25(Thu) 18:17)、tani
    そこに立っていたのは、いかにも警備員格好の男だったな。
    警備員「ここは関係者以外立ち入り禁止だ!奴が目覚めたらどうするんだ!」
    ポコ「奴って?」
    警備員「ここには前に精霊石を手にしてしまって暴走をしている酔っ払いを
        保護してあるんだ。
        酒を与えて眠ってるあいだは問題ないから良いが、精霊石は強力だからな。」
    ポコとルッツは背中の悪寒を感じずにはいられなかった。
    精霊石の力が暴走したときの恐ろしさを彼らは身にしみていたのだ。
    警備員「この奥にはそれ以外にも精霊石を手にして保護されている奴がいる。
        むやみに部屋に入らないようにしないと・・・」
    説明の途中にもかかわらず、警備員の話は途中で止まった。
    顔がポコ達の後ろを見て蒼白になっている。
    後ろに何かいる・・・。
    振り返ったそこにいたのは!
    ポコ「ヤ、ヤマモト!?」
    ルッツ「ハンターに引き渡したはずのこいつが、何でここに!?」
    警備員「出、出たあぁぁ〜〜!!」
    一目散に逃げる警備員。
    ヤマモト「・・・ゼ、ゼッ・・・タイ・・・ニ・・・」
    ポコ「どうしたのかな?何か凄い怯えてたみたいだけど。」
    ルッツ「あれ?こいつ何か持ってるぞ?」
    どこまでも鈍い2人。それを確認した後、彼らも同じような形で逃げ出すのであった。(つづく)
第6話 (2003/10/02(Thu) 12:16)、tani
人の手が行き届いているはずもない森の外れに、一台の艦が止まっていた。
その持ち主は、その場から数十mほど離れた場所で地図を見ている。
「この辺りのはずなのだが・・・」
一般人からはまずありえない緊張感をまとう、黒ずくめの男。
シュウである。
「方角からすると、もっと向こうか?」
そういうと、彼は先ほどの艦に向かいかけた。
そこではたと気付く。艦の付近に誰かがいる。
見覚えのある男だ。面識は無いと言って良いが・・・。
「・・・なにをやっている?カーグ。」
予想通り、カーグである。非常に嫌な予感がする。
「シュウ?何であんたがこんな所に?」
「お前達ニーデリアが帝国と争ってるのは調べてある。
 最近入った私の仕事は帝国の調査、そして危険であれば排除というものだ。
 それと同時にニーデリアから至急の依頼が来てな。」
「そうか、ポーレットが言っていた脱出のための艦を操れる者を
 既に呼んでおいたと言うのはあんただったのか。」
「・・・で、私の艦に何をしているんだ?」
その艦は既に前方3、4分の1が原型を留めていなかった。
その付近の地面に様々な部品が散らばっている。
無数のボルト、ナット、エンジンパーツ。ドアやイス等まで外されている。
「い、いや、ニーデリア高校の基地の近くに不審な艦が停めてあったから
 至急調査しろって言われて・・・。」
「それと分解するのとどう関係がある・・・?」
「ほ、ほら、テロ事件でよくあるだろ?爆弾を大量に積んで敵基地を殲滅しようと
 してるのかと思って。高性能爆薬を積んでいるか調べようと・・・。」
「その艦は今まで私が乗ってきているんだぞ」
無表情のままとんでもない威圧感のみが大きくなっていくのが見て取れる。
とてつもない気まずい空気が辺りを包みながら、長い沈黙が続くのであった。
「ま、まぁニーデアの基地はすぐそばだから。作戦中に整備班に
 任せておけば何とかしてくれるって。」
「本当に大丈夫なのだろうな?」
どこか府に落ちないまま、シュウはカーグに付いて
ニーデリア高校の基地に向かうのであった。(続く)
第7話 (2003/10/12(Sun) 21:02)、ファア
新たなメンバー・シュウを加えたカーグは会議室に戻り作戦の解説を行っていた。
カーグ「で、コンピュータルーム制圧後、俺はダッカムの元に向かう・・。あんたは潜水艦で脱出準備をしていてくれ。」
シュウ「待て、カーグ。そのドックからの進入だが、決して警備が手薄とは限らないぞ。」
カーグ「任せてくれ。その件については考えてある、おとりの潜水艇を使うんだ・・。」
シュウ「おとり・・?」
カーグ「そうだ、おとりの潜水艦で奴らの基地に魚雷でも打ち込めば奴らも必死になって俺たちどころではないだろう・・。」
シュウ「なるほどな・・、ただがむしゃらに突っ込むだけではないということか・・。しかしその潜水艇は自動操縦なのか?」
カーグ「いや、手動だ。いいパイロットがいたのでな。」

訓練場・・の片隅。
チョンガラ「なんじゃと!?するとワシをここから釈放とな!!」
カーグ一行に飛行船から落とされた後、島に流れ着き。訓練場の片隅でサンドバッグにされ、先ほどまで召還獣たちに愚痴っていたチョンガラが言う。
ポーレット「はい、特別に潜水艇付きです。売ればお金になりますよ。」
チョンガラ「これで貧乏生活からおさらばじゃのう!!うひょひょひょ!!」
ポーレット「あっ、それから乗って十分経ったら赤いスイッチを押してください・・。いいものがでますよぉ・・。」
チョンガラ「ひょ〜!金かのぉダイヤかのぉ!!」
ポーレット「秘密です・・(何とかとハサミは使いようですね。キャプテン)。」

少し前の会議室(ルッツ・ポコが出た後)
カーグ「何、漂流者がいたって?」
ポーレット「はい、自分は王族だと言ってつぼを持っていました。」
カーグ「・・・その男はどうした?」
ポーレット「はい、空いた部屋がなかったので訓練場に放り込んでおきました。」
カーグ「そうか、使えるかもしれないな・・。」
ポーレット「何にですか?」
カーグ「ああ、実は作戦に穴があると思って、もう一ひねり加えようと思ってさ。」
ポーレット「どんな作戦ですか?」
カーグ「おとり作戦だ。食後その男の元へ言ってこういってくれ・・。」
・・ヒソヒソボソボソ・・
ポーレット「分かりました。」

会議室
カーグ「以上が作戦内容だ。何か質問はあるか?」
シュウ「一つ聞くが、そこにいる顔面血だらけの大男は何だ?」
カーグ「気にするな、ただの役立たずだ。」
大男「ううっ・・す・・。」
コンコンコン!(ノック音)
カーグ「入れ。」
ポーレット「カーグキャプテン、パイロットの説得に成功いたしました。」
シュウ「説得?」
カーグ「いやぁ、パイロットがあまりに臆病者だったからさ。はは・・。(汗)」(続く)
第8話 (2003/10/13(Mon) 23:24)、tani
「いくつか質問がある。」
作戦の大まかな話を終えて、
装備の点検などをしながらシュウが言う。
「まず1つ目に第1の目的地から先、つまりダッカムと精霊石だ。
 これについての情報が全くない。
 コンピュータールームに全ての情報があると言う以上
 そこから先はいくらか運も関わるだろう。
 だとしたら潜水艦は遠すぎないか?」
「確かに言えているかもしれないな。
 となると格納庫に行くことも考えておいた方が
 良いかもしれない。」
「先ほども言ったが私はニーデリアの仕事以外に
 協会側からも指令を受けている。
 第1目的地で帝国の目的を調べたら状況次第で
 脱出のみでは行かなくなるんだ。
 それに私は潜水艦よりも飛空艇の方が扱い慣れているからな。」
「分かった。目的地に着いてから詳しく話そう。」

「2つ目の質問だ。
 帝国の目的は何なのか分かるか?」
「やはりハンターの情報網でも調べられなかったか。」
「となるとやはりそちらも?」
「あぁ、全くと言って良いほど分からないんだ。」
「帝国ほどの大きさを持っていれば精霊石など無くても充分
 領土を拡大できるはずだ。
 相手が精霊石を使って来るにしても帝国程の力が無ければ
 大して石が集まるはずも無い。
 となればそれ以外の目的があると考えるのが自然だろう。」
「既に帝国に何人かのスパイを入れているのだが
 全く情報が入らないのだ。
 どうやら帝国の中でもほんの一部の者しか知らない
 トップシークレットのようだ。」

「最後の質問だ。作戦の根本についての質問なんだが・・・。
 隠密行動にしては人数が私を含め5人のはずだったな。
 これは結構多いと思うのだが。
 人数は少ない方が見つかる確率も減るぞ。」
「それは分かっている。その為にいくつかの装備を
 こちら側で用意させてもらっている。」
「装備??」
「ポーレット、準備はしてあるか?」
「はい。」
そう言うと、会議室にいつの間にか置かれていた
大きなジュラルミン・ケースを取り出した。
「この中に装備がある。まずは・・・」
『うわあああぁぁーーー!!』
『マテエェェェーーー!!
 オレハ、ゼッタイニ、マケナアアァァイ!!!!!』
「あの声は・・・」
「・・・ほっとくのも何だしな。」
というと、カーグはケースの中の何かを一握り持って会議室を出た。
「カ、カーグぅ!!」助けてー!」
「何でヤマモトがこんな所に・・・?
 まぁある程度は予測できるが・・・。」
びゅん!!
口数も少なくカーグはその持っていた何かを思いきり投げた。
ヤマモトの額にクリーンヒットする。
そのままヤマモトは倒れ、沈黙する。
「・・・ダーツ??」
「強力な麻酔効果がある毒を塗ったダーツだ。
 効き方は個人差があるものの、10数秒で効果を発揮し
 数時間は眠ってしまう。」
「・・・白目を開けて口から泡を吹きながら寝てるんだけど・・・。」
「それぞれ吹き矢や麻酔銃など個人に合わせて
 扱いやすい武器としてオーダーしておいた。
 持っていくと良い。」(続く)
第9話 (2003/10/24(Fri) 22:03)、ファア
カーグ一行は武器、回復アイテムなどの用意が整いもう発進しようとしていた・・。
カーグ「ルッツ!回復アイテムの準備はOKか!?」
ルッツ「ばっちりだぜ!」
カーグ「ポコ!武器の準備はできてるな?」
ポコ「OKだよ・・(あんまり使いたくないなぁ・・)!」
カーグ「ポーレット!ヤマモトを保護室に置いてきたか!!」
ポーレット「はい!!」
カーグ「シュウ!潜水艇の準備は出来ているか!?」
シュウ「ああ、いつでも発進できる。しかし何か奇妙だ。」
カーグ「え?」
シュウ「俺の乗ってきたやつと比べると内装が少し変わったように見えるんだが・・。」
カーグ「きっと気のせいだろう。とにかく発進だ!!」
ポーレット「(通信機を持ち)チョンガラさん、発進していいですよ。」
チョンガラ「おおっ、そうかのう!!では出発させてもらうぞい!!」

二隻の潜水艇が発進した・・、だが。
ルッツ「うわっ!?なんだこのスピード!!」
ポコ「ひははんら(舌かんだ)!」
カーグ「メ、メーターを振り切ってる!?」
シュウ「おい!ガタガタ揺れてるぞ!!俺の潜水艇に何をした!!」
ポーレット「はい(通信機を持つ)。え、何・・。ええっ・・!?キャプテン、大変です!!整備班が潜水艇を間違えたと!!」
カーグ「なにぃ!?」
ポーレット「あまりにも外見が廃棄寸前のこの船と似すぎていたために間違えたそうです!!」
カーグ&シュウ「何だと!?」

その頃・・
チョンガラ「ええい!十分なんて待てんわい!!誰も見とらんし!!」
ポチッ(スイッチを押す)
そのとき潜水艇からローターが飛び出しヘリコプターに変形した!!
チョンガラ「何じゃただ空を飛ぶだけじゃったか・・。しかしこれもこれですごいのう・・。」(続く)
第10話 (2003/10/29(Wed) 22:48)、tani
    「って事はこっちが囮として使う方だって事か!?」
    「そう言う事になるんだろうな・・・」
    「まずいんじゃないの!?敵をおびき寄せちゃうんだし!!」
    「そんな事よりも差し迫った問題があるんだよ!
     この艦は囮として見つかりやすいようにそれなりの爆薬が積んであるんだ!
     しかも艦が発射後は出口が開かない!
     万が一に開いても帝国までの距離は約5キロ、それをわずか1分で走り抜ける艦だぞ!
     出た瞬間に吹っ飛ばされて体がバラバラになっちまう!」
    「時速にすると・・・約300キロだな・・・。」
    「何でそんなに早くしたの・・・?」
    「確かに、囮にするにしても早くする必要はないよな。」
    「って言うかその前に何やったらそんな速さになるのよ!」
    「それは、ニーデリアの最新技術の魚雷に使われるエンジンを応用し、
     ブースターのリミッターを完全に解除して・・・」
    「そんな事言ってる場合じゃないですよ!」
    「そうだった!爆破までどれくらいだ!?」
    「あと30秒です!!」
    「もう半分も経過してるの!?」
    「爆薬の解除は!?」
    「プロテクターが何重にもかかっています!時間的にも無理です!」
    「ルート変更して作戦無効にするのは!?」
    「フルオートパイロットです!!」
    「まさに絶体絶命か・・・」
    「あと15秒!」
    「どうしたんじゃ?お主ら。」
    艦に乗っていた全員が一点に視線をやる。
    そこにはさっきまで明らかにその場にはいなかった見覚えのある老人が立っていた。
    「ゴーゲン!」
    「何じゃ何じゃお主ら!近くに用があって来てみたら・・・」
    「そんな話は後!テレポートで安全な所に移動してくれない!?」
    「危険なんかのぉ?お安いご用じゃが・・・。それぃ!」

    魔術による転移から数秒後、どこか離れた場所で大きな爆発音がした。
    「ふ〜。何とか助かったな。」
    「何とかじゃないだろう。まだ作戦始まってもいないんだろうが。
     私の艦の事、忘れたとは言わせないからな。」
    「まぁそれは置いといて、ここはどこなんだ?」
    「お主らが帝国と呼んでいるらしい場所じゃよ。」
    「帝国内部?ねぇゴーゲン。さっき用事があるって言ってたよね。」
    「うむ、この近くで謎の強力な魔術を感じ取ってのぉ。」
    「魔術?そんなに大きな物なのか?」
    「古の失われた魔術じゃ。強大過ぎて使い手にも被害が及ぶ恐れが
     あって数千年前の地点でも既にほとんど使い手はおらんかったのじゃが・・・。」
    「精霊石を集めるのと何か関係があるのかもしれないな。」
    「ね、ねぇカーグ、今になって気付いたんだけど・・・。ルッツは?」
    「・・・そう言えばいないな。」
    「そう言えばゴーゲン・・・。テレポートで一度に移動できるのって
     確か自分以外最高4人まで・・・。」

    その頃ルッツは・・・
    「う、うーん・・・。」
    生きていた。爆風に飛ばされ、勢いそのままで帝国の地盤となっている
    岸壁に正面衝突してもまだ生きていた。
    「・・・誰だ?吹っ飛ばされてバラバラになるって言ったのは?」
    ずたぼろになりながらも唾と共に口に入った砂を海に吐き出し、悪態をつく。
    「・・・あれ?」
    その時気付いた。先程の爆発によって岸壁の一部に穴をあけている。
    そこには洞窟らしき大きな空洞があった。
    周りを見渡してみる。帝国に向かうためのルートはもちろん
    他には建物らしきものすら無さそうである。
    覗いた限りでは中には敵らしき姿は見当たらない。
    「・・・どの道行くしか無さそうだな。」(続く)
第11話 (2003/10/31(Fri) 10:33)、にんじん
カーグ達が帝国侵入ですったもんだしていた頃、ダッカムに協力することになったサニアはゴミ捨て場を漁っていた。
「サニア様、いくらなんでもそんなところには…」
「甘く見ちゃダメよ。迷子になったあげく海を越えて遺跡の最深部に行っちゃうような子なんだから。」
半ばあきれ顔のヨナンを気にすることなく、サニアはポリバケツを開け真剣な顔で中を覗き込む。

事の経緯はこうである。
少し前のこと、サニアは早速やって欲しい仕事があるとのことでダッカムの部屋に呼ばれたのだった。
「この手配書に描かれた人物を捕らえて欲しい。生死は問わん。」
「……なるほど。わざわざ私に頼むワケね。」
ダッカムに渡された手配書を見て、サニアは軽くため息をつく。
手配書に描かれていたのは、どこからどう見てもちょこであった。
「顔見知りかね? まあいい。
 そいつは神出鬼没に現れては、そこかしこを荒らしまわって逃げて行くのだ。
 被害そのものは微々たるものだが、このような小娘にいいようにされては士気に関わる。」
そこまで言って、ダッカムは少し言い淀む。
「そこで網を張って、大規模な捕縛作戦を展開したのだが…」
「結果は聞かなくてもわかるわね。この子は相当な力を持ってるもの。
 ま、私ほどじゃないけど。」
今度はダッカムがため息をついた。
「そういうことだ。やってくれるか?」
「ええ、いいわよ。雑魚を束にするよりもよほど有効ですものね。
 なかなか賢い選択だわ。」
「そうか。では吉報を期待している。」

そして場所はゴミ捨て場に戻る。
ヨナンがサニアの散らかしたゴミを片づけながらつぶやいた。
「でも意外です。サニア様がこんな雑用みたいな仕事を引き受けるなんて。」
「あら、私はそんなに親切じゃないわよ。」
「は?」
「考えてもみなさい。これならあの子を探す名目で帝国のいろんな場所を探れるじゃない。」
「あ、なるほど。」
「それに、上手いことちょこを味方につけられればそれこそ大幅な戦力アップになるわ。
 私がタダで仕事をするはずがないでしょう。」
「さすがはサニア様。抜け目がないですね。」
素直に感心するヨナン。この辺がサニアの従者を続けられる理由だろうか。
「さて、そろそろ帝国の調査…もとい他の場所へちょこを探しに行きましょうか。」
そう言ってサニアがゴミ捨て場を離れようとした矢先、聞き覚えのある声がゴミの山から聞こえてきた。
「サニアちゃんもうかえっちゃうの〜? ちょこもっとあそびたいの〜。」
気がつけばまだ探していなかったゴミの山からちょこが首を出している。
「ホントにいたんですね…」
「ちょっと予定が崩れちゃったけど…見つけちゃったものは仕方がないわね。
 ちょこ、少し話しがあるんだけど…」
「それじゃこんどはべつのあそびをするの〜!」
ちょこはサニアの言葉をまるっきり無視し、ゴミの山から飛び出すと可愛く一回転する。
直後、ちょこの頭上に凶悪なほど巨大な岩塊が出現した。
「ま、まさかあれをこちらに落とす気ですか!?」
「くっ! 必殺!36面体ランダムダイス verキングボ○ビー!!」
36面体のランダムダイスを20個まとめて岩塊に放り投げる。
通常絶対にあり得ないダイスの目から発生した凄まじい衝撃が、巨大な岩塊を粉々にうち砕いた。
「わーい、サニアちゃんすごいのー!」
「お姉様と呼びなさい!」
ヨナンの今はそれどころではというつっこみを無視し、ちょこをビシッと指さすサニア。
「いいわ、思う存分遊んであげる。
 ただし! その後は必ず私の言うことに従うこと! いいわね!」
「は〜い!」
元気よく返事をするちょこ。それを確認しサニアはほくそ笑む。
「それじゃ、いくわよ!」
「わ〜い、あそぶの〜!」

高層に存在するダッカムの私室。
ダッカムはワインの入ったグラスを優雅に揺らしながら、眼下に広がる帝国領土に目を向ける。
断続的に爆発音が響き、一筋、また一筋と黒煙が上がるたびに、彼の顔にも冷や汗が流れていく。
やめておけばよかった……けして口には出さないものの、今の彼の顔を見た誰もが、そう考えていると思わずにはいられない表情なのであった。(続く)
第12話 (2003/11/01(Sat) 00:47)、tani
「ダッカム様」
あまり広くない彼の私室にはよく響く、高い女性の声。
「タチアナか。被害状況はどうだ?」
「とてつもないです。
 停めてあった潜水艦12隻、飛空艇8機大破。
 兵士は19名重軽傷、9名行方不明、死者は今の所出ていません。
 被害額は1億4000万ゴッズに上ります」
「やはり奴に頼むのは間違いだったな・・・。」
「しかし彼女の能力はすばらしいです。
 一体何者なんでしょうか?
 常人では考えられない身体能力です。」
「そんな事はどうでも良い。
 どのみち奴がこの作戦に必要不可欠なのは分かりきっている事だからな。」
だからこそ厄介なのだ・・・。
ダッカムはそう感じずにはいられなかった。

ルッツが入った洞窟は、どういう訳か青く薄明るかった。
人の手によって造られたとは思えない舗装されてない床。
所々に剥き出しの岩があり、通路は結構進みづらくなっている。
しかし壁はと言えば魔術の為に用いられると思われる文字が幾つも見うけられた。
(・・・魔術による明かりが施されている?)
あまり詳しくないルッツは漠然と考えていた。
何の為に?と、答えが出ないまま進むと開けた場所になる。
半球状、いわゆるドーム状の広い空間。
サシャ村程度なら全て収まってしまうかもしれないと思った。
相変わらずの洞窟だがそこだけは決定的に違った場所が在った。
まるでこの地に降った全ての雨水がここに流れこんでいるような大きな湖。
海につながっているのかは分からない。
だが、澄んだその湖の奥から湖の洞窟の明かりと同じ、
それよりさらに強い青い光が見えた。
「・・・なんだ?」
覗きこんで調べようとしたその時。
「!?誰か来る・・・!」
すばやく岩陰に隠れる。
現れたのはマフィア風の黒のスーツと帽子に身を包んだ2人だった。
帝国の兵士だろうか?軍隊並の兵力と聞いていた為どこかイメージとは違っていたが・・・
「この辺りだよな。爆発のポイントに最も近いのは。」
「全く、この場所ってなんか不気味であんまり近寄りたくないんだよなぁ・・・。」
コツ、コツ、コツ・・・。
靴の音がゆっくりと近付き、そして遠ざかって行き・・・
「・・・!おい、穴があいてるぞ!!」
「侵入者がいるのか!?急いで連絡して警備を固めよう!!」
(まずい!!)
2人のどちらかが無線らしき物を取り出し、援軍を呼ぼうとしている場所へ
ルッツは一気に突進しながらダーツを投げつける!
こちらには全く気付いてなかったらしく、2つ投げたダーツは両方とも
兵士の1人に命中した。
異変に気付いたもう一人が振り向く前にダーツをさらに投げる。
見つかればさほど問題はないらしくあっさり避けられる。
しかし突進はまだ続いていた。
一気に距離を縮め、空になった手にナイフを持ちかえる。
「フェイタルダガー!」
急所を外しながらも、敵は見事に倒れ動かなくなる。
ダーツの毒が効くのに時間がかかるらしく、もう片方は微動だにしないまま
今になって倒れる。
「ここから帝国につながってるみたいだな。
 急いで離れた方が良いだろう。」

「どうしよう!やっぱり助けに行かないと!!」
多少ヒステリーらしき状態になりながらポコが言う。
「だがさっきの爆発といい生きてるのか?
 どう考えても・・・」
「あれくらいじゃ死なないさ。」
「ね、ねぇさっき艦から出ようとするだけで吹き飛ぶって・・・」
「あいつはサニアの怒りのはけ口にされ続けていた。
 サニアの事だ、常人では一回受けただけで廃人になってるだろう」
「何とも凄い言い方ですね、キャプテン・・・」
両者のつっこみにも動じず、言葉を続ける。
「あいつはみんなが思ってるより頑丈になってる。殺しても死なないさ。」
「それってまるでゴ●●リみたいないい方だね・・・。」
「・・・確かに、あの闘技大会の時見た限りでは考えられないほど頑丈だったな。」
「認めちゃうんですか!?」
納得しかけているシュウに向けてポーレットがつっこむ。と
『ウィーン  ウィーン  ウィーン』
警報と共に警報ランプ、アナウンスが飛ぶ。
『地下2階にて爆発が発生 壁に穴が開けられていることから
 侵入者がいると思われる。
 警備を強化、侵入者を逃がすな!』
「・・・予想通りだったみたいだな。」
「どれ、ワシが見に行ってやろうかのぉ」
「あ、ゴーゲンまだ居たんだ。」
何気にキビシイ言葉をいってのけるポコ。
「ルッツはワシに任せときなさい。
 恐らくワシと同じ目的じゃろうお主ら。先に行っておれ。」

「・・・しまった、寝過ごしたか!」
メギストの倉庫、食料を入れている箱の中から出てきたのはダークだった。
「カーグがこの飛空艇を追っていたって言うのを聞いて忍び込んだが、
 あれからどれくらい経ったんだ?」
倉庫から出て、外を確認してみる。
メギストは完全に着陸し、エンジン音もしなければ中に人影もない。
「ここが目的地だって事か。」
外の風景を確認して実感する。
軍隊といって良い程の兵力、メギストには及ばない物のかなりの規模の飛空艇の数々。
ここが基地なのだろう。
「・・・カーグは一体ここで何をする気なんだ?」
そんな事を考える、がすぐにやめる。
どうでも良い事だ。
「どんな事情があろうとも関係ない。俺は必ず奴を倒す!」
気合を入れ直したあたりで気付く。所々で爆炎をたなびかせている。そしてその先には・・・。
「サ、サニア!!」
そこにいたのは謎の笑顔に満ち溢れたちょこと
怪しげな笑みを浮かべてそれを追いかけるサニアだった。
一気に顔が青ざめる。
どんな事があってもあいつにはあまり関わりたくはないと思っていた。と。
サニアは何かに気付いて懐を探る。
謎の人形を取り出し、すぐ後にこちらに顔を向ける。
そしてちょこをほっといて凄い勢いでこちらに向かってきた!
「気付かれた!?」
ダークの災難はまだ終わってはいなかった・・・。(続く)
第13話 (2003/11/10(Mon) 17:21)、にんじん
まさにいい獲物を見つけたと言わんばかりの形相でダークに迫るサニア。
「ダァァァァクゥゥゥゥ!!」
「今は貴様に構っている暇はない! というか相手にしたくない!
 食らえ、セパタクロー・タイフゥゥゥゥンッッ!」
周囲に漂う氣を集約し、回転させることで巨大な竜巻を造り出す。
竜巻は周りの木や建物を巻き込み、サニアもろとも吹き飛ばす……はずだったのだが。
「あなたの力はその程度!? シャッフル・サイクロン!!」
サニアが大量の呪符を放つと、呪符は渦を巻いて巨大な竜巻へと変化する。
ダークとサニアの竜巻は激しく衝突を繰り返し、やがてお互いに勢いを無くし消滅した。
「その程度とか言ったわりには、どうやら互角のようじゃないか。」
「手加減してあげたのよ。あなたごと吹き飛ばしたら元も子もないもの。」
「クッ……!」
余裕の笑みを浮かべるサニアとは対象的に、ダークには焦りの色が見える。
「フフ、観念しなさい……」

地上でそんな攻防が繰り広げられていた頃、地下でもまた別な攻防戦が繰り広げられていた。
「まいったなぁ… どっかに地図でも置いといてくれりゃいいのに。」
ルッツはまだ地下をさまよっていた。
自然洞窟を改造して作られたこの地下空間はむやみに広いうえに
複雑に入り組んでいるので、すっかり迷ってしまっていたのだ。
「こりゃクタオの迷宮以上だぜ。…ってちょっと待てよ。
 これじゃ帝国の兵士だって迷うよなぁ。でも見回りが出来てたって事は…
 あいつらここの地図持ってたんじゃねぇのか!?
 今からでも遅くねぇ、盗りに……」
と言って戻ろうとふり返ったところで動きが止まる。
「…どうやってここまで来たのか、憶えてねぇ……
 俺様としたことが…」
がっくりと肩を落とすルッツ。
「やれやれ、何をやっとるんじゃ。」
突然背後から声をかけられ、ルッツはとっさに飛び退きナイフを構える。
が、すぐにそのナイフは降ろされた。
「ゴーゲン!? テレポートで脱出したんじゃなかったのかよ。」
「うむ、お前さん一人残してしまったようじゃからな。
 こうして迎えに来たんじゃよ。まぁ無事で何よりじゃ。」
「んじゃさっそく頼むぜ。いいかげん地下も飽きたしさ。」
「任せておけぃ。ゆくぞ、テレポォォォォトッ!」
ゴーゲンの叫びが洞窟に響き渡り、同時に周囲の景色が歪んでいく。
歪みはやがて収まり、元の景色が戻ってきた。
「やぁっと外に出られたぜぇ。
 暗い天井、ジメジメした空気。魔術文字の明かりがまぶしい!
 ………って場所変わってねえじゃねぇかよ!」
「おや?」
そう、歪みが収まり、元の“洞窟の景色”が戻ってきたのである。

「ノリつっこみか…なかなかやるわね。」
地上、一路コンピュータールームを目指すカーグ一行の中で、ポーレットがボソリとつぶやいた。
怪訝な顔をするカーグ達。
「どうかしたのか? ポーレット。」
「あ、キャプテン。いえ、どこかで誰かが漫才をしているような気がして…」
「昔からそういうのに敏感だったからな、お前は。」
ここでシュウが口をはさむ。
「帝国は軍国主義で娯楽に乏しいと聞いている。
 まさか漫才などをしている輩がいるとは思えんが…」
「ルッツとゴーゲンじゃないの?」
ポコの鋭い指摘に、思わず全員納得してしまう。
「あはは、確かにそれならあり得るな。帰ったらしめてやる。」
「その時は私も手伝います、キャプテン。」

「どうなってんだよゴーゲン! テレポートしたんじゃなかったのか!?」
「これは、結界じゃな。洞窟の壁に描かれた魔術文字が、
 魔力が外へ流れ出るのを妨げておるんじゃ。」
「結界って……これって照明じゃなかったのか。」
「奥の方から強い魔力を感じる。おそらくはそれを封じ……」
「見つけたぞ! 向こうだ!」
二人が悠長に話していると、数人の黒服が奥の方から走ってくる。
「やべ、見つかった! ゴーゲンがあんな大声で呪文叫ぶからだぞ!」
「お前さんの馬鹿でかいつっこみも原因じゃと思うがのぉ…」
「とにかく逃げるぜ! 相手にしてたらキリがねぇ!」
言うが早いかダッシュで逃げるルッツ。
しかし走り初めてふと思う。果たしてゴーゲンは走れるのか、と。
「まずい、ゴーゲン!」
慌てて引き返そうとすると、すぐ横を杖に乗ったゴーゲンがすごい勢いで通り過ぎていった。
「飛べんのかよ!」
「言っておらんかったか?」
慌てて追いかけるルッツ。しかしだんだん息が上がってくる。
「てゆーか、それなら、俺も、乗せて、くれたってッッ!」
「一人乗りじゃ。」
必死で逃げるルッツだが、黒服との距離はだんだん縮まっていく。
「クソ、このままじゃ、もう、俺も、限界ッ!」
「心配せんでも先が見えてきた。もう走る必要もないじゃろう。」
出口か!? 最後の力を振り絞りラストスパートをかけるルッツ。だが…
「壁ェェェェェェェッッッッ!!」
「まぁ、自然洞窟のようじゃしのう。行き止まりの一つや二つあるじゃろ。」
杖から降り、あっけらかんと言い放つゴーゲン。
そうこうしてる間に黒服はぞくぞくと集まってくる。
「フン、もう逃げられんぞ。」
「ちっ、やるしかねぇか!」
「久々に一暴れするとしようかのう。」(続く)
_________________________________

補足しておくと、地下洞窟の結界は要するに魔力を一方通行化しているので、テレポートで入ってくることは出来ても出ることは出来なくなってしまったわけです。
第14話 (2003/11/10(Mon) 22:44)、tani
「見えたぞ、あそこだ!」
音を消して走っていたカーグが立ち止まり、1つの部屋を指し示した。
「ここまで兵士に会ってないのが気になるんだけど。」
「囮の方に行ってくれたみたいですね。作戦大成功です」
ゴーゲンのテレポートしてくれた階にあったのもあったのかもしれない。
数分もせずに着く事が出来た。
「ここまでが隠密行動での作戦だ。ここで一暴れするぞ。せーの・・・」
ドバアァン!!
ドアを蹴破って一気に突入し、それぞれ武器を構える。
「・・・・・・あれ??」
無人だった。コンピューターは自動で動いているらしい。
「どういう事だ?警備も兼ねているのだろう?兵士が一人もいなければ
 アナウンスで現場に向かわせる事も出来ないじゃないか。」
「さっきはアナウンスが流れていた。情報に間違いは無いはずだ。
 アナウンスした後に出ていったという事しか考えられないんだが・・・。」
「ちょうど良いじゃん。今のうちに作戦を進めようよ。」
「考えていても始まりません。私も始めます。」
ポーレットはそう言うと端末を操作し始めた。
「改めて聞くが、ここでの目的は?」
「2つ。セキュリティを操作して火災に使われるシャッターなどを閉め、
 敵の分断を狙う事。
 もう1つはここの端末からトップシークレットの情報まで辿り着く事。
 ポーレットはシャッターを操作し始めてる。
 後は俺がやるからここの資料からも情報を探して欲しい。」
「カーグ!こんなの見つけたよ!!」
ポコが持って来たのは様々な写真を入れたレポートの束だった。
「これは・・・俺の写真?技を緻密に調べてるじゃないか!」
「エルク、シュウ、アレク、カーグ、ボク、ルッツ、グルガやイーガなんかもあるんだ。」
「この写真、裏の風景を見たところ以前私たちの出た闘技大会じゃないか?」
「・・・何となくだが、分かってきたぞ。
 あの大会で精霊石が出てきた時何かがおかしいとは思っていたが・・・。」
「な、何なの・・・?」
「あくまで仮説だが、あの闘技大会羽織れた地のような強い奴の
 戦いのデータを調べる為に行われ、最後に優勝者に渡される精霊石で
 優勝者は暴走。生き残るのはそいつのみになる。
 そして最後に精霊石を回収すればその事を知るものはいなくなる・・・。」
『なかなかの推理だけど、まだ穴があるわね。』
4人の誰にも当てはまらない声のアナウンスがルームに響く。
「誰だっ!!」
カーグの叫びと共に端末を操作中のポーレットを除く3人が一斉に身構える。
がしゃん!!
蹴破って入ってきた扉が突如として閉まる。
ポコが走り寄るが遅い。ロックがかかっているらしい。
部屋の奥の別の扉が開き、出てきたのは研究員らしき女だった。
それともう1人、いや1体だ。ロボット系モンスターだ。
(・・・タチアナ!ダッカムの側近だ!)
近くにいるシュウ達に聞こえる程度の小声でささやくのだった。
「どうでもいいが、俺達を相手に護衛がロボット1体とはなめられた物だな。」
「だからあなたの推理には穴があるといったのよ。」
「・・・なに?」
「最初の方の推理は合っていると認めるわ。でも・・・
 あなたの推理では戦闘データを調べる意味が無いわ。」
「合ってたのか。ほとんど当てずっぽみたいなものだったんだが。
 どっちにしてもそれはこれから調べれば良い。」
「どうやって??」
全く動じる事無くタチアナが返す。
「キャプテン!この端末セキュリティを操る事はおろか
 情報すら消去されています!!」
「あなた達が来る事はサニアから調べたわ。
 眠っている間に記憶を取り出す事でね。」
「サニア?どういうことだ、何故サニアが帝国に?」
「そこまで言う義務は無いわ。もうすぐこの帝国の最終目的が実行に移される。
 その為に、どんな小さな問題でも摘み取っておく。」
それを聞くのとどちらが早いか、カーグがタチアナに向かって飛び出した!
「テコンドー掌底!!」
ドオォン!
タチアナに向けて放たれた攻撃は、その傍にいたロボットによってはね返された。
(・・・今の技は!!)
反動にあわせてバックステップで距離をおく。
「このロボット、テコンドーを!?」
「そう!ロボットのAIと動力に精霊石を直結する事に成功した試作機よ。
 技を見切るだけではなく自分の物にする事も可能。
 精霊石から無尽蔵にエネルギーを取り入れ、止まる事もほとんど無いわ。
 まだ100パーセント自在に操れないけど十分実戦に出せるものよ。」
「戦闘データを調べてたのはこの為か。」
「あなた達にはもったいない相手だけど、
 戦闘データの採取にくらいはなって頂戴。」
それだけ言い残して扉の奥に戻っていく。
「カーグどうする、ロックを壊して逃げるか?こいつを倒して奴を追うか?」
「手がかりはもう奴しかいない!聞くまでもないだろ!!」

「おまえは俺を追う理由なんて無いはずだろ!?
 いくらでも謝るから追いかけて来ないでくれよ!!」
メギストの中で暴れまわった後、ダークは甲板の先の方まで追い込まれていた。
高さはかなりの物だが飛べない事は無い。
しかしサニアの魔術の方が早いだろう。迎撃されれば避ける事は出来ないだろう。
精霊石を持ったときの恐ろしさも思い出し、ダメ元で降伏する。
「何を言って・・・それも面白いかもしれないわね。」
「な、なんだよ。」
サニアは気味の悪い笑みを浮かべてダークを見ていた。
「私の状況も変わってね。今は帝国に雇われてるの。
 でも帝国に飼われているつもりは無いわ。
 カーグが現れたら私は帝国に反旗をひるがえすわ。」
「カーグ!?奴はここに来るのか!??」
「カーグの目的は元々帝国を潰し、ダッカムを倒す事だったわ。
 メギストと入れ違いでここに向かったのであれば
 そう遅くない時間でここに向かうはずよ。」
ダークは奇妙だった。何故サニアはカーグに関する情報を・・・?
「私に従い、命令通りに動くというのであれば見逃してあげる。
 帝国との戦いが終わったら後は好きにして良いわ。
 カーグとの戦いも邪魔だてしない。」
「グッ・・・」
サニアの命令というのは何か嫌な予感がした。
もし言う通りに動いてこの約束を本当に守ってくれるのかも
定かではない。
しかし・・・
「断れば・・・?」
「聞くまでも無いでしょう?」
非常に分の悪い決断ではあったが・・・
「・・・分かった。やろう。
 ところで、さっき追いかけていた子供はどうしたんだ?」
周りを見渡してみるとちょこの姿がどこにもなくなっていた。
「・・・見失っちゃったみたいね。」
そこにサニアの持ち物から電子音がした。
何かの通信機らしい。取り出して応える。
「こちらサニア。」
『奴を捕まえる事は出来たか?』
「見つけたけど見失ったわ。」
『もうそっちの方は良い。至急地下に向かってくれ。
 侵入者らしい。応援に向かって欲しい』
第15話 (2003/12/08(Mon) 19:31)、黒
「・・・分かったわ。」
サニアはしばし間を空けた後、答えた。
その時のサニアの口の端が僅かにつり上がっていたように見えたのは
ダークの気のせいだったのか・・・?
「ダーク、行くわよ。」
ダークは頷いた。
(こいつと行くのは嫌だが・・しょうがない・・・。)

「こいつを倒して奴を追う!!いくぞ!」
カーグは身を構えた!
「テコンドー・・・ストリーム!!!」
相変わらずいろんな物を投げつける!!
「・・・どこにこんな物をもっているのかな?」
ポコが率直な感想を述べる。
今回は前とは投げている物がひと味違う!
旧式のデスクトップパソコンにタンス、テレビ(ワイド)、こたつ、
ベッド・・・など。今回は重量系が多い!
そして・・・冷凍マグロ!!
全て直撃していた・・が・・・。
ロボットににダメージがあるようには到底見えない。
物理攻撃に対しての耐性がかなり強いようだ。
「テコンドーストリーム+1!!」
そう言うや否や、隕石を投げた!!質量無視しすぎ!
投げたというか・・・むしろ飛んでいる!
水平に飛ぶ隕石なんてどこにあるのだろうか。
いや、目の前にある・・・・。
冷凍マグロとは比にならない重量の物質がロボットに直撃した!!
FINISHなるか!?
(続く)
第16話 (2003/12/09(Tue) 23:49)、tani
「ふうぅ・・・。この最大質量技を食らえばいくら何でも・・・」
技の疲れからか息をつきながらカーグが言う。
隕石の衝撃からか鉄さびのような鼻につく匂いと煙が漂っていた。
ロボットの姿は煙によって見えない。
「カーグ、急いでいる時に悪いんだがあのロボットと大会とどう関係あるんだ?」
姿の見えないロボットにいまだ戦闘態勢を解かぬままにシュウが尋ねる。
「・・・。ほとんど当てずっぽうだったんだが・・・。
 100パーセント制御できる精霊石の使い手が出来ればとてつもない戦闘要員になる。
 人間では制御しきれないのであれば作ってしまえば良い。」
「じゃぁ帝国の目的はこのロボットの事?」
「いや、その一端だろう。
 ゴーゲンの言ってた魔術の事もある。
 それに世界征服の為とかなら人間を捨て駒にした方が手っ取り早い。
 まだ何か裏がある。」
「・・・!?キャプテン!!あれは・・・!」
質問してきたポコに説明してる途中に遮られる形になっていたが・・・。
それどころではなかった。
「あのロボット・・・まだ起動しています!!」
ほとんど無傷だった。
確かに前半の隕石以外のダメージはあった。
しかし隕石で見えなくなった後の一番期待していたダメージは全くなかったのだ。
「・・・『テコンドーフィールド』と『インビシブル』!!」
完全に相殺されていた。
見えなくなった直後のインビシブルと直撃の寸前でのテコンドーフィールド。
まさしく鉄壁の守りによってロボットの周りは隕石のダメージは全く見られなかった。
「エルクの技まで覚えてるようだな・・・。しかしまさか無傷とは・・・!
考えてみりゃ『暴走トッシュ』の強化版と考えりゃこの程度で
 片付くはずないわな・・・。」
『暴走って・・・。』
ポコとシュウの声がほぼ同時にカーグに向けられていた。
「ポーレット!まだ情報を少しでも残してあるかもしれない。
 念の為に端末をどこまで扱えるか調べておいてくれ!
 どのみち簡単に行く相手じゃない、行くぞ・・・!」

「ハァ・・・ハァ・・・」
既に30分以上戦ってるがロボットへのダメージはさほど大きくなってはいなかった。
対するカーグ達はまさしく疲労困憊。
攻撃に参加していたポーレット以外の3人は肩で息をしている。
「あ〜〜〜!!なんだって言うの!?全くダメージにならないよ!!」
「ポコがここまで怒るなんて珍しいな。
 しかし参った。こいつだけで持ってきた弾薬の半分は消費してるって言うのに・・・。」
「しかし妙だな。こいつ攻撃を自分からして来る様子がほとんど見られない。」
確かにそうだった。
インビシブルとテコンドーフィールドの効果が切れる合間を狙って
一斉に攻撃しているのに全く当たらない。
それは相手が攻撃して来ないでひたすらに同じ攻撃で
技を相殺しているだけだったからだ。
その証拠にカーグ達は疲労こそしているものの怪我は全くなかった。
「もうタチアナを追いかけても見つからないだろうし、
 いい加減諦めて逃げた方が良くない?」
「いや、防御に徹するように命令されてこうしてるのなら
 考えられる物の1つに別の逃げ道がないからと言う物があるんだ。
 行った所でトラップと敵が大量に構えているだろう。」
「こいつを相手にするのより簡単な気もするがな・・・。」
「プロトタイプと言っても既に完全と言って良い程の出来だ。
 時間稼ぎと同時にタチアナの研究データ採取の為の試運転って所か?
 どの道こいつを倒さないと進めそうにない。」
「ね、ねぇ。さっきから気になってるんだけどさぁ。」
「ん?なんだ??」
「あのロボット、背中にスイッチがあるみたいなんだけど・・・。」
素早さを活かした戦闘をしていたカーグ、シュウとは違って
気合ラッパなどでの攻撃をしていたポコは見ていた。
よく見てみないと分からないが確かに指のサイズ程度のボタンらしき突起があった。
「・・・考えてみりゃ、まだ100パーセント制御できないってタチアナが言ってたな。
 完全に制御できない物を動かしっぱなしにするはずないな・・・」(続く)
第17話 (2003/12/13(Sat) 10:28)、黒
「じゃあやっぱりあれって・・・。」
ポコがロボットの突起部分を指差す。
「おそらく・・・。」
そうカーグが言った後、テコンドーフィールドとインビシブルの
効果が切れるのを待って、ポコはロボットに近づいてみた。
攻撃するわけではないからだろうか?
ロボットは何も反応を示さなかった。
「押すよー。」
「わざわざ言わなくてもいいから早く押せ。」
「・・・・。」
ポチッ
・・・・。
・・・・。
・・・・。
「何も起こらないな。」
沈黙の中、シュウが口を開いた。
が、その時・・・。
パカッ
軽い音と共に・・・ポコが押した辺りのすぐ下が開いた。
中にはボタンのようなものが3つあった。
「何これ・・。」
「何って・・ボタンじゃないのか?」
「3つもあるよ?」
何故ボタンが3つもあるのか・・考えたけど分からなかった。
「ポコ、どれでもいいから押せ。」
「え〜っ!僕にはそんな勇気無いよ!カーグが押してよ!」
「俺が?嫌だな〜。」
カーグはそう言っているが、顔が嬉しそうである。
『(実は押したかったのか・・・。)』
シュウとポコはカーグに対して同じ事を思った。
「どれを押そうかな・・・・よし。」
どうやら、どれを押すかが決定したようだった。
「真ん中のボタン・・・君に決めた!」
「ポ○モン!?」(続く)
第18話 (2003/12/18(Thu) 19:04)、B−Co
    「だぁぁ〜〜〜〜!!!
     出口はどこだぁぁぁ〜〜〜〜!!!?」
    洞窟内にルッツの叫び声が響く。
    「大声を出したら見つかると、
     さっきから言っておるのにのぅ・・・。」

    黒服の追っ手をドリームノックでやり過ごしたルッツ&ゴーゲンは、
    未だに地下迷宮を彷徨っていた。
    「何でこんなに複雑な構造なんだよ!
     クタオの迷宮より複雑じゃねーか!!!」
    「しかし、トラップが無いだけでも
     有難いとは思うがの。」

    ゴーゲンの言う通り、2人が通っている通路には
    トラップの類は存在していなかった。
    もっとも、複雑な構造こそが、
    最大のトラップかもしれないが・・・。

    「・・・俺もう、ぐったり・・・。
     ゴーゲン、少し休もうぜ・・・。」
    「だらしがないのぉー。
     ・・・! むぅ!?
     この魔力は・・・!!!」

    突然、ゴーゲンが強力な魔力を察知し、
    間もなく、2人の前にサニアとダークが姿を現した。

    「あら・・・。久しぶりね、ルッツ。
     それにゴーゲンも。」
    「ゲッ!? サニア!!?
     ついでにダークも!
     なんでここに・・・!?」
    「俺はついでか・・・。」
    「ダーク、貴方は引っ込んでなさい。
     悪いけど、侵入者を始末するように言われてるの。
     消えて貰うわ!!!」
    そう言うと、サニアはシャッフルショットを放った!
    「「マジックシールド!!!」」
    ルッツとゴーゲンは同時にマジックシールドを張った!
    相乗効果により、何とかシャッフルショットを相殺する。

    「ふ〜ん・・・なかなかやるじゃない。」
    「いきなり何しやがる!!?」
    「サニア・・・お主、精霊石に手を染めたようじゃな。
     あれは人間の手には余る代物。
     力に溺れた人間の末路は、お主も知っておるじゃろう。
     早々に、その力は捨てることじゃ。」
    「説教ならお断りよ。
     それより、取引をしない?」
    「と、取引だって・・・!?」
    「そうよ。ここから出してあげる代わりに、
     貴方達の知っているニーデリア高校の情報を
     全て教えて貰うわ。」
    「ワシはニーデリア高校のことは全然知らんぞい・・・。」
    「そう言えば、ゴーゲンは途中参加だったっけ・・・。
     ・・・カーグ達には悪いけど、俺にはニーデリア高校は
     関係無いし・・・。」
    「・・・交渉成立、ね。」
    妖しげな笑みを浮かべるサニア。
    (帝国を倒したら、最大の障害はニーデリア高校になるわ。
     今の内に、集められる情報は集めておかないとね・・・。)


    一方その頃、カーグ達は・・・。

    「君に決めた!
     テコンドー・スイッチON!!!」

    いつもの掛け声と共に、スイッチの1つを押すカーグ。
    すると・・・。

    「モードチェンジ・・・・・ジェノサイドモードに変更シマス。」
    「ジェノサイドモードだと・・・!?」
    「な、何かヤバそうだよ、カーグ・・・。」
    「大丈夫、恐れずに逝くんだ!!!」
    「キャプテン、熱血モードでごまかさなくても・・・。」
    「ってか、逝くって・・・。」

    などと話している内に、ロボットが変形し始めた。
    インビシブルとテコンドーフィールドは解除されたようだが、
    次々と、武器が機体から現れていく。
    それは、どこをどう見ても攻撃仕様の形態だった。
    (続く)
第19話 (2003/12/19(Fri) 09:01)、にんじん
マシンガン、ショットガン、剣、クラブ、靴……あまり統一性のない武装だが、次から次にロボットの体からはえてくる。
「てゆーか、靴って……何考えてんだろ。」
ポコが全員の感想を代弁する。
だがあっけにとられて見ている間にロボットは完全に変形を終え、銃口がカーグ達を捕らえた。
「まずい! みんな、ポコの後ろに隠れるんだ!」
「え!? 僕!?」
カーグの号令により一斉にポコの後ろにかくれる面々。
それと同時にロボットがカーグ達へ攻撃を開始した。
ギリギリで反応したポコのシンバルが、銃弾の雨を何とか防ぐ。
「てっ、手が痺れるぅぅぅぅ!! あ痛!」
銃弾に紛れて飛んできた汚い靴が、ポコの頭にヒットした。…あまり意味はないが。
「キャプテン! このままでは持ちません!」
と、ポーレットが叫んだものの、銃弾でかき鳴らされるシンバルの騒音によってすぐ隣のカーグには全く届かない。
それでも何か言っているのはわかったカーグが聞き直すが、それも騒音によってポーレットには届かない。
何度も大声を張り上げていた二人だが、とうとう、キレた。
「ポコ! 静かにしろ!」
「ポコさん! 静かにしてください!」
「そんな事言われても〜! …あれ? 聞こえる。」
気がつけばあれだけうるさかったシンバルの音がやみ、銃撃も止まっている。
「弾切れか。ならば!」
状況をいち早く察したシュウが速攻でマシンガンを撃ち込んだ。
ロボットの銃器を支えるアームに狙い撃たれた銃弾が、見事目標を破壊し銃器類が床に落ちる。
「どうやらインビシブルを使う様子はなさそうだな。ならば!」
両手にマシンガンを構えるシュウ。
さらに背中のバックパックが開き、中からマシンガンやショットガンを持ったアームが何本も伸びてくる。
「せめてエルクがいればよかったのだがな。やむを得まい。」
その時シュウの前にポコが立ち、気合いラッパを構える。
「僕がエルクの代わりになるよ。どこまでやれるかわかんないけど。」
「いや、助かる。…いくぞ!」
『クロスファイア!!』
両手に構えたマシンガン、バックパックの無数の銃器、さらにポコの気合いラッパと荒獅子太鼓によってロボットに銃弾、爆弾、レーザーの雨が降り注ぐ!

やがてシュウの銃も弾切れ、ポコも限界に達した。
「はぁっ、はぁっ……も、もうダメ…」
「クッ、奴は…」
怒濤の攻撃によりロボットは全身ボロボロ、見るも無惨な状態になり、ところどころショートして火花が散っている。
「やりましたね、キャプテン!」
「いや、何もしてない俺にふるのもどうかと思うが。
 でも何かヤな予感がする。こういう奴はたいがい……」
カーグの言葉をさえぎるように、壊れかけたロボットから合成音声が聞こえてきた。
「自爆装置ガ起動シマシタ。自爆マデアト1分。」
「自爆ぅぅぅぅ!? しかもあと1分って早すぎ!」
「くそっ、やっぱりか! ポーレット、脱出口は!?」
「ダメです! まだドアはロックされたままです!」
「万事休すか……」(続く)
第20話 (2003/12/19(Fri) 11:34)、tani
    「いや、まだ手が無い訳ではない。時間がないので手短に話すぞ。
     やつの動力を外す事が出来れば当然起爆することも出来ない。」
    「あと1分だよ!?」
    確かにもっともな話をするシュウだが、この時ばかりは絶望的に感じられた。
    自爆までの時間が短く、問題は起こらないと判断しているのか
    ロボットは防御らしい技も何も変えずに破損した体で自然体になっている。
    「しかしやるしかないだろ!!
     残ってる体力をすべて注げ!!全員で一斉攻撃するぞ!!」
    その号令が一気に全員の緊張を高める。
    まさしくいちかばちかの賭けである。
    「うおぉぉ!テコンドーコズミックスライサァァ!!」
    「フルカスタムディメンションガン2丁乱れ撃ち!いくぞ!!」
    「とっておき!荒獅子奮迅太鼓!!」
    「究極ツッコミ!超極大金ダライ×10!!」
    全員の尽くした奥義が衝撃波となって部屋を揺らす。
    ぜぃ・・・ぜぃ・・・ぜぃ・・・
    技を出す前の地点で既に肩で息をしていたメンバーは膝と掌を床につけて
    何とか倒れない力を残してる程度まで疲弊していた。
    「これで・・・やつの精霊石を・・・起爆装置から外せてれば・・・。」
    もうもうと衝撃の粉塵がこめる中、ロボットは・・・
    『残リ20秒』
    タイムカウントは止まらない。それはまさしく阻止できなかったことを意味している・・・。
    「ダメだったか・・・。」
    「こんな所で・・・。残念です。キャプテン。」
    「・・・?なんだ?何か忘れてる気がするんだが・・・。」
    ・・・
    ・・・・・・
    ・・・・・・・・・・・
    「あ!」
    「そうよ!」
    「わかったぞ!」
    「何!何なの!?」
    「急げ!!」
    ポコだけが理解してなかったらしく、ほかの3人はほぼ同時に
    先ほどの疲労困憊が嘘のようにロボットに向けて飛び出している。
    「どっちだ!?」
    「確率は2分の1ですね。」
    「だから何!?」
    「残りのボタンだよ!真ん中は攻撃モードと防御モードの変更!
     だとしたら後残るは自爆スイッチかその停止スイッチだ!!」
    「赤、黄、青。黄色以外のどれだと思います!?」
    「私に聞くな!?」
    「いやそんな事言わずにハンターの勘ってやつを・・・」
    『残リ5秒』
    「うわあぁぁぁ!!」
    「どっちでもいい!押せ!!」

    ぽちっ

    怒声に押されてシュウとポーレットがそれぞれ別々のボタンを押していた。
    プシュゥ。
    『音声ガイダンスに従って操作を行ってください。
     ただいま緊急停止の操作が行われました。
     緊急停止を行う場合、赤を。
     今までの操作を消去し再起動する場合、黄色を。
     強制終了をキャンセルし、元の状態に戻す場合青を押してください。』
    「と・・・」
    『とまったぁ・・・。』
    ようやく静寂を取り戻した部屋に、4人は崩れ折れるのだった。
第21話 (2004/01/07(Wed) 03:58)、tani
「あぁぁ・・・もう動けない〜。」
先程の激闘の末、ようやくロボットを無力化したものの
その傷と疲労はとてつもないものだった。
致命的という程の物はないにしても疲労しきっていた。
あれから数分経っていたが疲れが邪魔しているらしく
ポコは大の字の仰向けになって倒れている。
「我ながら情けない姿だ・・・。」
ポコほどではないにしても、シュウも疲労を隠せていないようだ。
片膝と片手を床について立ち上がろうとしているが
指さえも震えてうまくいかない。
カーグは・・・
「・・・なぁ、質問していいか?」
「え?あぁ、何だ?」
「任務とか関係なく分解するのが好きとかじゃないだろうな・・・」
激闘の疲れもどこえやら、既に総攻撃の効果もありほぼ原型を留めてないロボットを
さらに分解している。ポーレットもそれを付近で手伝っている。
「そんな事はない。こいつは仮にも帝国の目的のひとつ。
 こいつの中に何か秘密があってもおかしくないだろ?
 ただの兵隊に精霊石を使うとは思えないからな。」
「・・・まぁ確かにあの大会が仕組まれたものだったとして
 闘い以外のデータを何のために採取してたのかが謎だな。」
「だろ?それを調べることも兼ねてこうして分解してるんだ!」
(だからって手足や頭まで分解する必要はあったのか?)
部品単位で分解されたロボットを見て口には出さないものの、
残りの2人はそう思わずにはいられなかった。

「・・・という事なんだ」
魔術文字が明滅を繰り返す洞窟で、ルッツは知っている範囲の情報をサニアに話していた。
「ニーデリアの情報も意外と大した事ないのね。
 帝国の事についてほとんど分かってないじゃない。」
「そんな事俺に言われても仕方ないだろ?
 で?どうやってここから出るんだ?」
「こいつよ。」
サニアは懐から怪しげな人形を取り出した。
「これはそれぞれの人形に下等の精霊に入ってもらってるわ。
 ほとんどの魔術は外へと逃げられないようになってるけど
 契約の元に使われる一部の精霊魔術ならもしかしたら…。」
「しかし契約という事は使うための制限があるのじゃないかのぉ?」
「仲間の元にしか移動できないって代物よ。ヨナンの元へ行ける。いくわよ!」
高々と掲げると、その場の全員が光に包まれた。
まわりの景色がゆがみ始め、そして何も見えなくなった…。

「どうやら成功したみたいね。」
転移が終了したすぐ後にいた場所は、先程の洞窟と比べていやに暗い場所だった。
長い事掃除もされていないのか、カビとも腐敗臭ともつかないいやな匂いがたち込めている。
「何だ、ここは?」
「・・・どうやら牢屋のようだな。」
「よく見えるわねあんた。」
「おまえらと違って夜でも戦えるようにしてあるんだよ。」
「本当にこんな所にヨナンがいるのかのぉ?」
「この人形の魔術が成功してるんだから間違いないわよ。」
魔術によって明りを作りながらはなす、と。
「何じゃ何じゃ??何でおまえらここにおるんじゃ?」
チョンガラだった。いつもの事だがぼろぼろになって牢屋越しに話しかけてくる。
「チョンガラ?なんであんたここにいるの?」
「潜水艦に乗せられてボタンを押したら空飛んでのぉ。
 操縦できずに飛んでいたら帝国の圏内に入ったらしく撃ち落されたんじゃ。」
「つくづくこいつなんで死なないんだか・・・。」
「ヨナンを知らない?この近くにいるはずなんだけど・・・。」
「さっき変なロボットに連れられて入ってったのがそうかも知れんぞ。」

「サニア様!」
チョンガラの言葉通り、言われた先に進むとなじみの顔がそこにあった。
「ヨナン!どうしてあんたが牢に!?」
「ダッカムはあなたの策を読んでいます!!
 ここで何か大きな魔術を行うためにあなたを生贄に使うつもりらしいです!!」
「それで貴方が捕まった・・・。私への取引材料として・・・」
「まぁ話としてはつじつま合ってるわな。」
「許さないわよ〜!!ダッカム!!
 ○○○○して●●●●して□□□□□□□□してやるわ〜!!
 私を敵にまわした事を一生後悔しながら苦界に送ってあげるわよ〜!!!!」
「いつもの暴走だよ・・・。」
「あれはカーグだろ??前から思ってたけどどこか似てるよな。あの2人。」
「ヨナン、何か情報を聞いてない??」
「タチアナが言ってたんですけど、カーグ達が来たため
 研究データを別の場所に移動するのが大変だったって話をしてました。
 ひとまず武器庫に移動してそれからまだ片付いてないそうです。」
「王手飛車取り!!カーグと合流後そこに向かうわよ!!」
第22話 (2004/02/14(Sat) 16:54)、にんじん
「これは!?」
ロボットを解体していたカーグが、突然叫び声を上げた。
「…なんだろう? ……どうした、二人とも。」
声を聞きつけ疲れた体を押して駆けつけたシュウとポコは、
いきなりのトーンの変化に思わず床に突っ伏してしまっていた。
何とか顔を上げたポコが抗議の声をあげる。
「いきなり叫ぶから何かと思ったんじゃないかぁ。」
「悪い悪い。いや、これが動力源だと思うんだが、いまひとつ正体がつかめなくて。」
そういってカーグはロボットの残骸からコードをひょいとつまみ上げる。
その先についていた物は拳よりやや大きめの黒い球体。
それを見たポコは驚きの声をあげる。
「シュウ! これってもしかして……」
「間違いないな。これはヂークベックだ。」
ここでカーグが口をはさむ。
「ちょっと待て。ヂークベックってあのポンコツロボットか?」
「ああ、そういや知らなかったっけ。
 ヂークのあの体はただの入れ物、そのコアユニットが本体なんだ。」
「でも、大丈夫でしょうか?」
後ろでポーレットがボソリとつぶやいた。
「さっき、私達このロボットにそれはもう全力で攻撃しましたよね。」
「あ……」
思わず固まる三人。
「ヂーク! ヂーク! 大丈夫!?」
必死に呼びかけるポコだが、ヂークのコアユニットは何の反応も示さない。
「やっぱ……壊れたか?」
「ちょ、カーグぅ! 滅多な事言わないでよぉ!」
「とりあえず回収しておこう。
 もし本当に壊れてしまっているのなら、あとでヴィルマー博士に修理してもらわねば。」
そう言って、シュウはカーグからヂークのコアユニットを受け取る。
カーグはコアユニットを一瞥すると、感心したようにつぶやいた。
「しかし、これが精霊石の代わりに使われていたなんてな。
 ポンコツな外見に依らず、結構すごかったのか。」
「ヂークは古の機神だからね。精霊石の代わりとしては充分なんじゃないの?」
二人の会話を聞きながら、シュウはコアユニットをしまってすっくと立ち上がる。
「さて、どうする。こちらの計画はほぼ筒抜けだったようだしな。
 あきらめて撤退するか。」
「いや、手ぶらで帰ったら校長に何をされるか…ゲフ、ゲフン!
 も、もとい! ここで何もしなければ取り返しがつかなくなるかもしれない。
 精霊石の一つも、いやせめてその研究データくらいは奪取しないと!」
「でも精霊石も研究データもどこにあるかわからないんじゃ…」
「それなら心配無用よ!」
突然ドアが開き、聞き覚えのある声が響き渡る。
「お前は、サニア!?」
「ルッツ! ゴーゲン! 良かった、無事だったんだね!」
「ああ、何とか…っておわ!」
再会の挨拶をしようとしたルッツを押しのけて人影が飛び出した。
「カーグ! ここであったが百年目!」
「ダーク!? 何故お前がここに!」
「やめなさい!」
とっさにサニアはわら人形と五寸釘を取り出し、人形の胸に釘を突き立て深々と打ち込んだ。
「ぐあああああああああっっっ!?」
途端にダークは胸を押さえうずくまる。
「事が済むまでは私の命令に従う契約でしょうが。勝手なコトするんじゃないの。」
「わ、わかった… わかったからやめてくれ…」
人形から釘が引き抜かれダークは呪いから開放されるも、
突然のダメージに息も絶え絶えでなかなか起きあがれない。
相変わらず怖ェ女……サニアとヨナン以外の全員の心がシンクロしたのは言うまでもない。
「それはともかくカーグ、研究データは武器庫の方に移してあるそうよ。」
「随分耳が早いな。確かなのか?」
「タチアナが言っていたのをヨナンが聞いたわ。まず間違いないはずよ。」
「よし、武器庫へ向かうぞ!」

(続く)
第23話 (2004/02/15(Sun) 16:25)、ヤマモト
メンバーが集まり研究データを奪取するべく意気込むサニア一行(?)だった
しかしその中でふいにその存在が忘れられようとしてる者がいたのを覚えているだろうか・・・

「あ〜あ、つまんないの〜、サニアともはぐれちゃったの〜」
ちょこである、ゴミ捨て場でサニアにまんまと撒かれたのである
「それにこの遊園地、なにも乗り物が無いの〜、兵隊さんが飛び掛ってくるだけで・・・」
どおやら帝国の要塞は彼女にとっては「遊園地」に見えるのであろう、「兵隊さん」というのはもちろん警備にあたってる兵士のことである
今彼女がこうして平気で帝国内を歩いていられるのは襲い来る兵士を秒殺的に負かしてしまうからであった
「つまんないっ♪つまんないっ♪・・・ん?」
彼女は何かに気付いた、その先には「スクラップ置き場」という札があり兵士の話し声が聞こえた
「むむ!なにやら内緒話の予感なの!隠れるの隠れるの〜」
・・・と彼女は頭の上に薬草をつけ木の枝を両手に持った・・・こんな場所ではそんな姿は偽装にも何もならないのだが・・・
「おいどうする?このガラクタ」
「どおするったて、他に使い道なさそうだし捨てるしかないだろう」
「しかしロボットに投入する精霊石の代わりがこいつの中身とはなあ」
兵士の足元に転がってるガラクタはよく見ればヂークベックであった、コアユニットが抜かれているので少しも動かない
「中身だけ使えればもうあとはいらないだろう、じゃ捨てるぞ、お前はそっちを持ってくれ」
兵士がヂークを持ち上げスクラップ処理機に運び込もうとした、だが
「ガラクタさんを捨てちゃ駄目なの〜!!」
ドガッ! バキッ! 「ぐあ!」「がはっ!」
とたんに兵士二人をのしてしまった、そしてヂークのそばにかけよった
「起きて、起きて、ガラクタさん」
「・・・・・・・・・・・・・・」
コアユニットを抜かれたヂークは返事をするはずも無かった
「動かないの・・・そうなの!ちょこは命を二つ持ってきたの!ガラクタさん、さあ甦るのよ!」
ちょこの手のひらから小さな光球が出てきた、その光球は自然とヂークのボディに吸い込まれるように入っていった
ウイーン
「・・コ・・・・こコはドコジャ?」
コアユニットを抜かれたはずのヂークは起き上がり言葉を話したのだ、これもちょこの力がなせることなのか
「おはようなの、ガラクタさん♪」
「しつレイな!ワしはヂーくベッくジャ!」
「ねえねえ、ちょこ今鯛靴(たいくつ)なの、この遊園地で面白いところ知らない?」
「おもシロイとコロか・・・ソウじゃイいトコろをシッテイルゾ!」
「どこどこ〜?」
・・・・・・・

ヂークはちょこを大きな部屋に案内した、そこは数え切れないほどの機械が置いてあり部屋の中央には他の機械とは比べられないほどの大きさの機械が置いてあった
なおこの部屋に来る途中何十人もの警備兵が襲ってきたが当然のごとく瞬殺で倒してきたのであっさりこの部屋にたどり着くことが出来た
巨大な機械はものすごい数のコードとつながっておりゴウン ゴウンと激しい機械音を出していた
「ついタゾ、さテアノでかイ機械ヲコワすとドウなルトオモウカ?」
「どうなるの〜♪」
「将棋倒しノようニこの「遊園地」がコワれるのジャ」
そう巨大な機械とは帝国の全ての動力源、帝国の心臓部にあたる装置なのだ、これを壊せば当然帝国のほとんどの機関は壊滅してしまう
「おもしろい〜さっそく壊すの〜♪♪♪」
後のことは何も考えてなさそうでちょこは楽しそうである
「イカん、ソウなれバワしらもペシャンコジャ」
「駄目なの?〜じゃあなんで連れてきたの」
「ワしもヨクかんガエてイナかっタ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「そこまでだ」
沈黙を裂くかのように何者かの声がした
「我が帝国内でずいぶん好き勝手やってくれたものだ、おまけに動力部を破壊しようなどとは・・・貴様等ただで済むと思うな」
白衣を着た研究者のような男が現れた、名札には「研究機関主任」と書かれていた
「あれを始動させろ!CAM−913「カイザー」だ!」
主任が声を上げると天井から巨大なロボットがちょことヂークの前に降り立った
ズシイーン!!!!!!!!!
「やれ!「カイザー」よ侵入者を排除しろ!!」
ギギギギギーー
ロボットから数多くの機銃が出てきた、そして全ての機銃がちょことヂークに狙いを定めた
「オオ!こいヤ!ワしにカテルカナ!」
 スッ ヂークはどこからか携帯電話のようなものを取り出した
 ピ ピ ピ 次にダイヤルを入力した、すると
「スタンディング バイ」携帯から音声が流れた、ヂークは携帯を天に掲げ
「ヘンシン!」と叫んだ
ビュワアアアアアアアアーーージャキイン!!
「何!?」
ヂーク姿はかって七勇者を守る「騎士団長」と呼ばれていたあの頃の姿に変わっていた
「すごいの〜ロボットさん!じゃあちょこも」
 バッ ちょこはどこからかカードデッキを取り出した、するとちょこの腰の脇辺りにポーチのような機械が取り付けられた
「変身!」そう叫んでカードデッキをポーチに収納した、その瞬間
ビュワアアアアアアアアーーーー
ちょこの姿は大人の女性に変わりメリノー種の羊のような角が生え背中からは体を覆い尽くすような羽が生えていた
「何!?こいつら」
主任は驚愕の表情を見せていた
「この世界を汚そうとする貴様等帝国!許してはおけん!」
「生き物にはそれぞれ居るべきところがあります、あなた達の居るべきところはここではありません」
ヂークとちょこは今までの行動からは考えられないような言葉を話した
「すばらしい!!貴様等が欲しくなったぞ!貴様等を我が研究機関の研究材料として使ってやろう!!!!」
「愚かなり!」「イクシードチャージ」
「・・・」「ファイナルベント」
二人がそれぞれのアイテムを使い魔力を開放した、瞬く間にあたりは怒号につつまれ、敵のロボットには光のラインがほとばしった
ギギギギギギー
「カ、カイザー!ばかな!?」
「たあああーー!!」
「はあーーーっ!!」
ヂークとちょこは光のラインに従うように背中合わせでロボットにキックをあびせたのだ
ドガアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!!!
ロボットは跡形も無く吹き飛んだ、形勢が不利と感じた主任は一目散に逃げ出したのだった

(続く)
第24話 (2004/02/16(Mon) 03:03)、tani
「ちょっと待ってくれ」
目的も決まり、出発しようとしたのを止めたのはシュウだった。
「タチアナの言った事を覚えてるか?
 サニアから情報を入手して私達がここに来る事は読めていた、と。」
「確かに。眠っているサニアからどうとか言ってたな・・・。」
「どういう事?」
「サニア様・・・。メギストに乗せられた時ボクとは別の部屋に運ばれ
 後から合流させてもらったんです」
全く身に覚えが無いサニアに向かって、
さっきより少し顔色が悪くなってるヨナンが話した。
「そのわずかな時間の間に、眠っているサニアの記憶を何らかの手段で
 垣間見て私達の存在を知った。という事なのでしょうね。」
「問題はそこじゃないのだ。」
シュウはサニアの傍まで寄り、調べ始めた。
「・・・・・・あった!」
肩にかかった髪のあたりにそれはあった。
わずか2、3ミリ程度。ボールペンの先ほどの大きさでしかないそれは
サニアの髪の揺れや動きでも決して外れようとしてはいなかった。
「発信機だ。すでに私達と合流している事も予想済みだろう。
 ひょっとしたらヨナンの聞いた情報もそれを予想した物かも・・・。」
「な、なんですって!?」

薄明かりの洞窟の中、ランプを使ってゆっくりと進む人影があった。
ランプは道を照らすよりむしろ手にした地図を見るためのようだ。
ほとんど迷う事も無く進むのに意味を成しているのかは本人以外分からないが。
ダッカムである。
程無くしてほぼ最深部である地底湖へ辿り着いた。
「侵入者が入ったというが、無事のようだな。」
湖の淵に立ち、覗き込むまではしない物の
中にある光を確認している。
「付近の兵士がやられてる以上見られているだろうな。」
と言うと、通信機のような物を取り出して操作した。
「・・・タチアナ?私だ。」
『ダッカム様。どうしましたか?』
「地底湖の侵入者だが、恐らくあれを見ている。
 まだ準備に時間がかかる。怪しまれれば厄介だ。
 警備の人員をこちらへ集めろ。」
『しかしカーグ達はどうするんです?
 サニアと接触して武器庫へ向かおうとしてるでしょうが
 警備がなければ怪しむと思われますが。』
「発信機があるのだ、問題ないだろう。
 服に付ければ1ヶ月間の洗濯でも落ちない物だ。」
『しかし・・・』
「ニーデリアへの進軍もサニアのおいかけっこのせいで台無しになった。
 生贄としての目的になっている魔族の少女もまだ捕まっていないのだ。
 こいつへと到達される訳には行かない・・・!」

「くぅ〜!!こんな物で!!」
サニアは大激怒して人の話も聞かずに人形に五寸釘を打ち込んでは抜いていた。
やはりそれに合わせてダークはダメージを負っているらしく
貫かれる度に体を弓なりに反らせ、弾ませる。
白眼を剥いて泡を吹き出してる所から既に気絶しているようだ。
「サニア、落ち着けって。
 今までの行動が読まれていたのがこいつのせいだとすれば
 こいつをうまく使えば帝国を出し抜けるかもしれない・・・。」
「ちょうど良いヤツがすぐそこに居ますね。
 後で武器庫に宝が隠されているって言って渡しておきましょう。」
ポーレットは見逃していなかった。
サニアが入ってきた扉の奥に『お馴染み』の人影が見えていたのだ。
発信機はどうやっても壊せず。サニアの髪をそこで切らねばならなかった。
サニアの怒りはそれのせいもあるのかもしれないが。
「でも目的がなくなっちゃったよ?どうするの?」
「そうでもないぞい」
全員の目線が声の主。ゴーゲンへと向けられた。
バラバラに分解されたロボットの残骸を見ていた。
「ルッツ、お主ヂークの体を直したことがあったと聞いておるが?」
「え?あぁ。一応あるが・・・」
「構造に関してはどれくらい覚えておるのじゃ?
 うろ覚えでも良いからこのロボットとの共通点を探してみるがいい。」
「………あっ!」
「核となる部分と一部を除けばこやつの体はまさしく機神そのものじゃ。」
「ちょっと待ってくれ!
 機神が新たに作られたというのか?」
信じられないという様子でシュウが聞く。
「古の知識を持つワシもここまでよく似た物は初めて見るわい。
 まさしく人間に最も近いロボットじゃて。」
「・・・ゴーゲン、もったいつけてないで教えてよ。」
さすがに耐え切れなくなったポコが不平をもらした。
他の物も『仮説である』という事も忘れて聞き入っている。
「こいつを作れるのは古の機神の技術に深く関わる物だけじゃ。
 何物かが復活。もしくはそれに近い形で存在していると思うのじゃ。」
「『近い形』って恐ろしく歯切れ悪いが例えばどんな物だ?」
昔から一緒にいた訳ではないカーグは印象が薄いらしく質問した。
「記憶を封印する石に強い念を込めると
 時としてその意識が実体を持ち、生前の目的を達成しようとすることがある…。」
「まさか・・・『ちょこ』のようなもの!?」
「まぁそうじゃな。そいつが完全復活を狙って。
 もしくは生前の目的を完遂せんとするために
 古の大魔術を発動せんとしているとすれば・・・」(続く)
第25話 (2004/02/18(Wed) 23:10)、にんじん
「遅い!!」
帝国を臨む丘の上で叫んだのは、
誰あろうニーデリア高校校長・虎縞平八その人である。
その後ろにはニーデリア高校の精鋭部隊が整列している。
「進撃ののろしはまだ上がらんのか!」
「帝国領内で多少の混乱は見受けられますが、
 カーグから作戦成功の連絡はまだ入っておりません!」
「むぅ……」
虎縞平八はしばしの逡巡の後、身を翻し精鋭部隊に向き直った。
「カーグからの連絡の有無に関わらず、
 夜明けと共に総攻撃を開始する! 皆の者心せよ!」
いっそう表情が厳しくなる精鋭部隊の面々。
夜空は既に星が消え始めていた。

帝国領内、コンピュータールーム。
ゴーゲンの説明のあと訪れた沈黙を、最初に破ったのはシュウだった。
「どうやらやることは決まったな。
 その古の大魔術とやらの発動を阻止する。」
「そうだね。その何者かっていうのが誰かはわかんないけど、
 帝国が手を引いているんじゃあんまりロクな事じゃなさそうだし。」
「帝国への侵入時にルッツが迷い込んだ地下施設…
 強い結界のしかれておったそこが、おそらくは大魔術の発動場所じゃろうて。」
そこへポーレットが口をはさむ。
「待ってください。確かに帝国の目的を潰すのも重要でしょうが、
 精霊石の脅威をなんとかしないことにはニーデリア高校精鋭部隊の突入が出来ません。」
不意に訪れる、間。
そのまま凍り付きそうな空間の中、思い出したようにポコが口を開いた。
「ああ、そういえば前にカーグがそんな事言ってたっけ。」
「そうだぞポコ。ダメじゃないか忘れちゃ。あっはっは。」
「そう言うキャプテンもなんで止まってたんですか。
 作戦の中心人物がそんなことでどないすんねん!」
ドビシィッ!
ポーレットの強烈なツッコミにより、カーグはきりもみ状態で吹っ飛んだ。
「ふぅん、なかなかやるわね。」
サニアが妙な感心をしている横で、シュウとゴーゲンは淡々とこれからの行動を考えている。
「大魔術と精霊石、どちらも一刻を争うな。」
「大魔術の行われようとしとる地下施設へはテレポートで行けるがのう。
 精霊石の方は場所もわからん。」
「虎穴に入らずんば虎児を得ず、か…
 やむを得ん。タチアナの仕掛けた罠にはまってみるとしよう。」
思いも寄らぬ結論に慌てたのはルッツだ。
「お、おいおいちょっと待てよ。罠だとわかっててかかるってのか?」
「わかっているからこそ利用できるのさ。罠をしくからには餌があるはずだ。
 そこからなんとしても精霊石の情報を引き出してみせる。」
「そういうことであれば、私もシュウさんに同行します。」
カーグにつっこんで余韻に浸っていたポーレットが、いつの間にか側に来ていた。
「精霊石の処理が済み次第、照明弾でニーデリア高校の部隊に突入の合図を出します。
 シュウさん、よろしくお願いしますね。」
「うむ、全力を尽くそう。」
「では儂らはテレポートで地下施設へ直行するとしようかのう。」
「細かいメンツとかはどうするんだ?」
ルッツの問いに、少し考え込むシュウ。
「大魔術の阻止となれば魔術に長けた者が必要だな。」
「それと術に専念しとる間、護衛してくれる者もおらんとのう。」
「よし、地下へはカーグとサニア、ルッツに行ってもらおう。」
「よっしゃ、俺とカーグは護衛役だな。」
「残った者は私と一緒に武器庫へ向かうことになるが……彼はどうする?」
一同の視線がヨナンに注がれる。
「え? あ、私? 戦えませんよ、もちろん。」
「わかってるわよ。あなたにはちゃんとやることがあるから大丈夫。」
サニアはそう言うと、まだ気絶したままのダークを無理矢理蹴り起こした。
ポコが思わず同情含みの言葉を漏らす。
「ひ、ひどい…… っていうか、なんでここでダークがとばっちりうけるんだか。」
「もちろん、ダークにはヨナンと別行動をとってもらうからよ。」
緩慢な動きで起きあがるダークは、今まで気絶していたため当然状況がつかめない。
「い、一体何の話だ。俺にはさっぱり…」
まだ半ば朦朧としているダークに、サニアは有無を言わさず手配書を押しつける。
「いいから、あんたはヨナンと一緒にちょこを探してきなさい。」
「なんと、ちょこが帝国内におるのか。それは心強いのう。」
「どうやら決まったようだな。
 地下の大魔術阻止はカーグ、サニア、ルッツ、ゴーゲン。
 精霊石の処理は私とポコ、そしてポーレット。
 ちょこの探索はダークとヨナンか。」
「チョンガラはどうするんだ? まだこっそりこっちの様子うかがってるけど。」
ルッツに言われて見てみると、確かに扉の向こうから恐る恐る覗き見ている。
「囮としては充分役にたちそうだな。当初の予定通り俺と一緒に来てもらおう。」
「うわ、なんかシュウもだんだんカーグ色に染まっているような気がするよ…」
ポコは少しあきれ顔だ。
「……まぁ、ともかく。時間が惜しい。直ちに行動開始だ!」
おう!と全員が気合いを入れているその横で、
ポーレットにつっこまれきりもみ状態で吹っ飛んだカーグは
放っとかれたままいまだに倒れ込んでいた。
「あの、一応リーダー俺なんだけど……誰か、聞いてる?」

(続く)
第26話 (2004/02/25(Wed) 00:49)、tani
    周囲の景色が歪み、徐々に見慣れた景色が暗い洞窟へと変化していく。
    湿っぽい空気が鼻に付く。
    先程のロボットとの戦いで埃っぽい空気に慣れてしまったせいだろう。
    辺りを見回しながらカーグは質問した。
    「これがさっき言ってた魔術文字か?」
    洞窟でありながら真っ暗ではないのがこの文字のお陰だというのは
    誰が見ても断言できるだろう。青い光で明滅を繰り返している。
    「そうじゃ。洞窟に元から存在していたのか。
     それとも洞窟に存在する何かの力を放出しない為に
     後から造られたのかは分からんがのぉ。」
    「元から存在してたとしても何かの力を外に放出しないように
     するという目的は同じでしょうけどね。」
    「ところでゴーゲン。目的地間違ってない?」
    ジメジメした空気は感じるものの地底湖は目の前にはない。
    ゴーゲン自身が地底湖に来ていないのだから無理もないが
    洞窟のど真ん中に現れたようだ。
    「そうみたいじゃのぉ。」
    「だからっていくら何でもこんな所に!?」
    どっちを見ても薄暗い洞窟である。
    方向も分からないのだから仮に地図を手に入れても全く分からないだろう。
    「サニアが同じチームで助かったぜ。
     もう1回さっきのアイテムで脱出しようぜ。」
    「1回使い捨てよ。精霊を扱う魔術アイテムは作るのが難しくて
     もう無いわ。」
    「・・・進むしかなさそうだな・・・。」

    武器庫へと続く道の途中には搬入の為らしい広い道が作られていた。
    小型の機材を運ぶ為の乗り物が入り口の付近に見える。だが・・・
    「・・・間違いなく罠だよね。」
    搬入ルートは照明が全く消えておりそれこそ真っ暗だった。
    「暗闇の中で致命的となる1撃を加え、再び暗闇に逃げる。
     単純ながら状況を利用した戦術だな。」
    「先程のロボットの事もあります。
     慎重に行かないと危険ですものね・・・。
     それとももっとシンプルに罠を張っているのかもしれません。」
    「どうしたんじゃ?あの先にお宝があるんじゃろう?」
    何ともあっけらかんとしたチョンガラの発言に
    それ以外の全員がシンクロして頭を抱えた。

    「探せって言ったってどこを探せっていうんだか・・・」
    ダークとヨナンはとくに目的地も無く帝国内をさまよっていた。
    「とりあえず人が集まって騒がしくなってる所か
     『普通居ないだろ』って思う所だそうです。」
    「すんげぇ曖昧な上に極端だよなぁ・・・。
     それにこれは何なんだ??」
    ダークの持っているものは謎のディスクのような物だった。
    「さっきのバラバラになってたロボットからルッツさんが
     取り出した物ですよね。」
    「ロボットの力の源だからとか言ってたけど。
     そんなの渡してどうするんだ??」
    「サニア様から渡すように言われたそうですよ。」
    どうも腑に落ちない心地のようだがこれ以上
    分かりそうもないので話すのをやめた。その時だった。
    数人の帝国兵士が固まって通信機で連絡を取り合っている。
    とっさに路地に隠れて様子を見ることが出来た。
    『こちらメイン動力室!!援護はまだなのか!?急いでくれ!!』
    「至急向かわせている!なんとか持ちこたえてくれ!!
     侵入者の特徴を仲間に伝えてくれ!!」
    『人間とは思えない怪力を持った少女と
     ブリキのオモチャのようなロボットだ!!』
    「・・・は?何だそれは??」
    『私にも分からんがそうとしか言えんのだ!!』
    「わかった、とりあえずそう伝える!」
    通信を打ち切り、ダーク達とは反対の方角へと消えていった。
    「・・・そういう事か・・・」
    「・・・確かにちょこの事考えればいっしょに行動してても
     おかしくありませんからね・・・。」(続く)
第27話 (2004/03/15(Mon) 23:43)、にんじん
深く暗い地下洞窟。
そのともすれば鬱になりがちな雰囲気を吹き飛ばすように、
元気な少年達の駆け足の音が辺りにこだまする。
そう! 恒例のおいかけっこである!
「勝手に恒例にするなぁぁぁぁ!!」
「ルッツ! ナレーションに突っ込んでる場合か!」
必死に走るカーグとルッツ。
そのわきをゴーゲンが杖に乗って、
サニアも呪符で造った飛行ユニットに乗り軽やかに飛んでいる。
そしてその後ろを十人からの黒服達が追いかけてくる。
「ほらあなたたち、もっと速く走らないとまた追いつかれるわよ!」
飛行ユニットに優雅に寝そべって檄を飛ばすサニアに、
当然ながらカーグとルッツは冷ややかな視線を注ぐ。
「サニア、どうせならそれもう少し大きく造って
 俺達も乗せてくれたって良いんじゃないか?」
「嫌よ。この大きさがちょうど良いの。これ以上は面倒くさくって。」
「やれやれ、嬢ちゃんらしいのう。」
「言ってる場合かよ! このままじゃホントにまた追いつかれちまうぜ!
 今まで何人倒したと思ってんだ!」
ルッツの言うとおり、今まで何度となく追いつかれてはそれを撃退し
逃げ回っているのであるが、黒服の数は減るどころか増える一方であった。
「ったく、いつの間にこんな増殖したんだよ!」
「増殖って……しかし、確かにこの警備の数は異常だな。」
「おそらく、大魔術が最終段階に来たので邪魔が入らぬよう警備を強化した、
 というところじゃろうな。」
「だったら、こんな所でだらだら逃げ回ってる場合じゃないわね。」
キッ、と通路の先を見据えるサニア。
そこには黒服達が行く手を遮るように集まりだしていた。
「ゲ! 前をふさがれちまった!」
「悪いけど、先に行くわよ!」
そう言うとサニアは飛行ユニットの速度を上げる。
行く手を遮る黒服達を跳ね飛ばし、高らかに笑い声をあげながら遥か彼方へ行ってしまった。
「無茶苦茶だな、オイ。」
「ルッツ…サニアの事はともかく今は自分の心配をする時らしい。」
「やれやれ、すっかり囲まれてしまったのう。」
後方はさっきまで追いかけてきた黒服にふさがれている。
前方の黒服もサニアがいくらか跳ね飛ばしたとはいえそれ以上に集まってきている。
「やるしかねぇか。…俺ってなんかこんなんばっかだな。」
「さすがに数が多いな。
 出来ればなんとかやり過ごしたいが……待てよ?」
「なんじゃカーグ、どうかしたのか?」
「……いや、思ったんだが、ここは結界のせいで
 テレポートで入ることは出来ても出ることが出来ないんだったよな。」
「こんな時になに当たり前のこと言ってんだよ。」
「いいから聞け。
 ゴーゲンが空を飛んだりしてる以上魔力そのものは封じられていない。
 そして結界が押さえてるのはここの中心にある大魔術の魔力で、
 俺達はその大魔術を止めるためにここまで侵入した。だったら…」
「…だったら?」
「どんどん奥までテレポートを繰り返せば、目的地まで着くんじゃないのか?」
カーグのちょっとややこしい一言に黒服達も忘れ思考の整理をするルッツとゴーゲン。
そうこうしてる間にも黒服達は集まってくるわけだが。
「………なるほど、たしかにそうかもしれん。」
「カーグ、冴えてる! あ、でもそれじゃサニアはどうすんだ?」
「勝手に先行した奴はほっとこう。ゴーゲン、頼む!」
「任せぃ! テレポォォォォト!」
ゴーゲンが一際気合いを入れて呪文を唱えるとカーグ達の周囲の空間が歪み、
そしてカーグ達の姿は黒服達の前から消え失せた。(続く)
第28話 (2004/04/18(Sun) 23:55)、B−Co
    一方、武器庫班のシュウ・ポーレット・ポコ(&おまけ)は……。

    「ここが武器庫の様ですね……」
    「うわ…。古今東西の武器が揃ってるね……」
    「ああ……。丁度いい、弾薬を補給しておくか」
    「お宝じゃ! お宝の山じゃぞい!!!」

    能天気な者約一名を含め、武器庫へと到着していた。

    「この先には、もっと凄いお宝があるに違いない!!!
     宝はワシのもんじゃあー!!!!」
    「あ、チョンガラが……」
    「む!? 追うな!! あの先は……!!!」


    ドガーーーーーン!!!!!


    「……強力火薬×100とエクスプロージョンの魔法が
     込められた地雷があったのだ……」

    チョンガラは、いつぞやの時のようにボロ雑巾と化していた。

    「うまく進めば、先程の地雷以外は回避できるようになっている。
     俺が先導するので、後に続くんだ」
    「分かりました」
    「う、うん……」
    (ってことは、元々あの地雷を
     チョンガラに踏ませるつもりだったの…!?)


    シュウの先導によって、武器庫を進んでいく3人。
    そして、とうとう奥の部屋へと辿り着いた。

    「ここの兵器研究室に、精霊石が運ばれたはずだ」
    「真っ暗で何も見えないよ……!?」
    「待ってください……誰かいます……!」

    暗闇の中に潜む人物。
    それは、紛れも無くタチアナであった。

    「予想通り、ここまで来れたようね……!
     しかし、残念だけど、精霊石は既にこの兵器に
     使わせて貰ったわ!!!」

    そうタチアナが言い放った瞬間、部屋に照明が灯された。
    いや、部屋というにはあまりにも広い空間であった。
    そして、タチアナの後ろでは、巨大な機械兵器が
    今まさに起動せんとしていたのである。

    「これは……アカデミーのカオスアームズか……!?
     ……いや、ガルムヘッドのパーツもあるようだが……!」
    「ちょっと待って! 左肩には
     グロルガルデみたいな部分もあるよ!!!」
    「私も資料でしか見たことがありませんが、
     フィアークリムゾンやシュタイングラーフといった
     旧アカデミーの機械兵器類のような部分もあります!」

    「フフフ…! 過去の機械兵器をベースに
     精霊石を動力源とした兵器を作らせて貰ったわ!!!
     さあ、行きなさい!
     ガルムグロルフィアーシュタインアームズ!!!!」
    「うわ! ネーミング適当!!!!」
    「そんなことに突っ込んでる場合じゃありません!」
    「来るぞ!!!」
    (続く)
第29話 (2004/05/04(Tue) 02:46)、tani
「さぁ行くわよ!ガルムグロルフィアーシュタインアームズ!!」
「だからそのいい加減なネーミングどうにかして〜!!」
よほど気になるらしくポコは再びツッコんだがそれどころではなかった。
銃声が一斉に響いた。
腕の形になっている体を軋ませながら振り払うように放ったマシンガンである。
先程までシュウ達がいた場所を切り裂くように銃弾が床を砕いた。
シュウとポーレットは反応するが早く一気にその場を跳躍、銃弾の範囲外へと移動している。
ポコはシンバルでガードし、チョンガラその後ろに隠れて避けている。
いや……
「!?」
シュウが移動したのは避けるためではなかった。
刹那という表現がとてつもなく遅く感じられるほどの早さで肉薄したのだ。
やはりそのロボットに任せて逃げようとしていたタチアナにである。
予想外の行動にタチアナは動けない、が。
「……チッ!このロボットには主人を守る命令も入っているのか」
さすがに情報を手に入れるために攻撃を仕掛けたらしく、シュウは麻酔銃を手にしていた。
しかしその麻酔銃の弾は子供の身の丈ほどもあろうかという手によって
止められていたのだった。思わず舌打ちするシュウ。
守りから一転、のしかかるように殴りつけて来る拳を蹴って背後に跳んで距離を置く。
「さすがにこいつを使わないと無理か……」
背負っていた荷物の中に入っているマシンガンを取り出した。
愛用のフル改造のディメンションガンだ。
武器庫に着いた地点で弾は補充してある。
攻撃が再び来るより早く弾丸が満タンな事を確認すると再び突進した。
マシンガンの集中砲火が五月雨の如く轟く。
否、先程のマシンガンではない。人間に対抗する武器ではなかった。
対戦車装甲などに用いられる特別製の弾丸である。
もし1歩間違ってかすりでもしよう物なら紙屑のようにバラバラになっているかもしれない。
生かしておくつもりは無いようだ。
それでもシュウは止まらない。
弾丸の軌道が読めているのか、弾丸の中にいても彼にダメージらしい物は無いように見える。
いや、先程のマシンガンの時もそうだが数発はヒットしているようにも
見える。しかし命中する前に避けるように弾が避けるように移動している。
「……ウインドスラッシャーで弾道を変化している!?」
タチアナが驚愕の表情を見せる。
逃げられないと判断したらしく、離れた場所で戦闘を見守っていた。
今度は迷う事無くロボットに向かっていくシュウ。
銃弾が効かないと判断したロボットはシュウを掴みかかる。
「甘いッ!!」
掌で言うなら親指のようなアームの部品を十数発の弾丸が立て続けにヒットする。
鋼鉄のひしゃげる無機質な音と飛び散る指の破片が威力を物語っていた。
指がなくなった事によって元からとんでもないスピードで無理と思われる
掴みを完全に無力化していた。
腕の部分を蹴って心臓部と思われる顔の前で着地した。
「遊びは終わりだ!」
銃口を押し当てるようにしてトリガーを引いた。


テレポートしたカーグ達は問題なく地底湖へと辿り着いた。
「どうやら大丈夫だったようだな」
周りを確認してカーグが安堵する。
その場に来て見るまで信じられなかったが確かに異常に広い。
「・・・野球が出来るくらいの広さはあるな。」
「そんな悠長な事言ってるヒマないだろ。」
さすがに状況を理解しているらしく湖を改めて見ている。
「言うまでもないが、あれが魔術の発動装置なんだよな??」
湖の中心。青い明滅を繰り返す『何か』を指してゴーゲンに問う。
ゴーゲン自身慎重に確認するように目を凝らし、頷きで応えた。
「ここからじゃよく分からないな。近づいてみるか。」
剣などの荷物を外して湖に飛び込む準備をしながら話した。
その間もゴーゲンは何かに気付いたらしい。
「よし!行くぞ!!」
「待つのじゃカーグ!!」
ゴーゲンの静止も空しく、既に飛び込んだ後だった。
ほんの1、2秒後、『水』に大激突して鈍い音を立てる事となった。

「いってぇ、何だこりゃ!?」
風によって振える水面は間違いなく水にしか見えなかった。
しかしカーグはその水のような液体の上に『座って』いた。
足場を確認するように踏みつけてみると石のように固い。
それでいて風に揺れるそれはゼリーの上に立っているように不安定に感じられた。
その上にカーグは顔から飛び込むような形で激突したのだ。
「魔力を中和してしまうタイプの封印のようじゃ。
 恐らくワシの魔術を叩き込んでもビクともしないじゃろう。」
「……魔力に耐性のあるバカでかいスライムみたいな物か……?」
「分かりやすく言えばそうじゃな。
 しかも再生能力が尋常じゃないのである程度の物理攻撃でも耐えてしまうのじゃろうな。」
「この封印を破るために精霊石を使ってロボットを…?」
「分からぬ。確かに魔力そのものではなく魔力を使って動くロボットなら
 物理的な力に変換しているので効果はあるかもしれんが……。」
「そこまでして封印を解除しようとしているあれが何なのか。だよな?」
「そうじゃ。ましてやサニアを生け贄にしようと企んでいたという。
 ちょこを手配書まで作って探している点も
 帝国を荒らしているだけいう理由なのだろうか…?
 まだ分からない事が多いわい。」
「だがちょっと待ってくれよ!
 という事はこの封印が解けなければ帝国の目的を阻止できるという事だよな?」


「どうやら振り切ったみたいね。」
呪符の飛行ユニットを操りながらサニアは独り言を発した。
いつしか先程までの黒服の集団もいなくなっている。
「私の目的は帝国の領土を我が物にする事。
 となればこれ以上カーグ達と行動を共にすれば身動きが取れなくなる。」
サニアは気付いていた。
最深部だろうが出口だろうがテレポートの使える場所は
魔術文字の範囲内という制約が加わるだけだという事を。
そしてもう1つ。
「……いい加減姿を現したらどうなの??
 黒服をあれだけ使っておいておびき出したつもりのようだけど」
飛行ユニットを解除して呪符へ戻しながら岩陰に向けて叫ぶ。
黒服達を蹴散らしていた時から感じていた気配が一層近付いていた。
いくらスピードを早めても決して振り切る事が出来ずにいたのだ。
岩陰から現れたのは……。(続く)
第30話 (2004/06/20(Sun) 21:50)、にんじん
「ったく先行しすぎだぜ! 追いつくのに結構かかっちまったじゃねえか」
そういって現れたのはルッツだった。
サニアはやれやれといった感じで構えを解く。
「他の二人は?」
「黒服を引きつけてもらってる。もうすぐ合流できると思うぜ」
「そういう意味じゃないわよ」
「え……がふっ!?」
突然サニアが呪符をハリセンに変え、ルッツを張り倒す。
予想だにしない行動に不意を付かれたかたちでルッツはモロにくらい、
そのまま壁に強く激突した。
「な……何…を…」
「猿芝居はやめなさい。本物ならこのくらいじゃピンピンしてるわ」
振り上げたハリセンを肩にのせ、一瞥するサニア。
ルッツはうめき声を上げると、スライムに姿を変え崩れ去った。
「さて、高みの見物はやめて出てきたらどう?
 それとも、無理矢理引きずり出されたいのかしら」
「お前の仲間を忠実に再現したつもりなのだがな。
 やはりあの中ではお前が一番切れ者らしい」
声と共にサニアの目の前の空間が歪み、そこから1人の女性が降り立った。
全身黒を基調とした衣装をまとい、切れ長の瞳に頭には二本の角、
そして背に漆黒の翼が生えたその女性は…
「あんた、アクラ……?」
「フ、私がここにいるのが不思議か。だろうな」
「どういうこと!? あんたはちょこに吸収されたはずじゃ…」
「ああ、力も記憶も全て奪われたがな。
 砕けた記憶石の欠片の中で抜け殻になっていたところへ、
 あのダッカムという男が精霊石を持って現れたのだ」
「それで精霊石の力で復活を果たしたってわけね。
 あの男、全くとんだ隠し球を持ってたもんだわ。
 でもあんた、ただの記録のはずじゃなかったの?」
「さてな。記憶の積み重ねか、強い力ゆえか、ともかく私は己の意思を得た。
 もっとも、父上はそれに気付いてはくれなかったようだがな。
 …さて、おしゃべりはここまでだ」
アクラは両掌に魔力を集中させる。
「ダッカムの命令でな、お前を捕まえなければならんのだ」
「せっかく魂を得たというのにあの男のパシリなんて、落ちたものね」
「どうかな。私も本質はお前と似たようなものだ。
 ただ少し、お前より制約が多いだけさ」
「……そっちも色々ありそうね。いいわ、相手をしてあげる。
 実を言うとね、前からあんたとタイマンでやりあってみたかったのよ」
ハリセンを呪符に戻し、構えるサニア。
しばらくにらみ合いが続いたが、やがてお互いの顔に笑みが浮かぶ。
それを合図に二人の魔力の激しいぶつかり合いが始まった。 (つづく)

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第4部は途中終了しました。
リレー小説は雑談掲示板で自然発生的に開催されたイベントです。
長い間続けていただきありがとうございました。
執筆された皆さまに感謝いたします。
                            (管理人)
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