【エルベキツツキの生態】


【まぼろしの鳥】
 すらりと伸びた美しい木立の続くエルベ周遊道。古
代の王朝文学にもたびたび登場する名所だが、かつて
騎士たちが目にしたかの地の風景は、今よりもずっと
華やかだったはずだと研究者は考えている。
 今では失われてしまった彩り。それは詩歌に登場す
る1羽の鳥だ。名前は「エルベキツツキ」。現在、こ
のあでやかな青色のキツツキを目にすることは極めて
難しい。絶滅が疑われたことも1度や2度ではない。
 しかし、騎士たちの歌の中では、この鳥は日常的な
ものとして頻繁に登場する。今とは比較にならないほ
どたくさんのエルベキツツキがいたことは間違いない
ようなのだ。ではたった数百年の内に、一体どんな運
命がこの鳥を襲ったのだろうか。

【奇妙な生態】
 実のところ、エルベキツツキは「キツツキ」である
にも関わらせず決して「木を突いたり」しない。「し
ない」というより「できない」のだ。
 エルベキツツキの細いくちばしは柔軟で、樹皮の間
にいる虫を捕らえるの最適な形をしている。一般にキ
ツツキはくちばしで樹木に穴を穿って巣穴とするが、
エルベキツツキには無理な話だ。
 そこで彼らは別の方法を見出した。自分で掘らなく
ても周りに穴はたくさんある。そう、他のキツツキが
作った巣穴を横取りしてしまえばよいのだ。
 虫を捕まえるのに最適なくちばしと、頑丈な木のす
みかを手に入れたエルベキツツキ。彼らの繁栄は永遠
に続くかに思われた。

【移入種の侵入】
 異変は唐突に訪れた。見たこともない大型のキツツ
キが林に住み着いたのだ。この大型種は、はるか遠い
場所から船に乗ってやって来たのだった。航海技術が
発展し、交易が盛んになるにつれ、船舶の往来も活発
になっていった。だが、乗り込んでいたのは人間ばか
りではない。積荷にまぎれて、他の土地の生き物たち
も続々と上陸を果たしていたのだ。
 大型種の登場により、リベール固有のキツツキたち
は次々とエルベの林を離れ、新たな生息地へと分散し
ていった。エルベキツツキたちにとっても、巣穴のサ
イズが違うよそ者は邪魔でしかなかった。しかし、そ
れでも彼らは林の中にとどまり続けた。生息地が分散
すると、他のキツツキの巣穴を見つけることが難しく
なるからだ。巣穴を見つけられなければ繁殖すること
もできない。こうして次第にエルベキツツキの繁殖の
チャンスは減っていき、彼らは長い斜陽の時代を歩み
始めることとなる。

【賢さが仇に】
 他人の巣穴を使うという巧みな手口で、一時は繁栄
を謳歌したエルベキツツキ。しかし自らの力で生き抜
くことを放棄した彼らは、急激な変化に対応すること
ができなかった。一方で他のキツツキたちはその後も
繰り返された移入種の侵入にも関わらず、今も昔と変
わらぬ繁栄を誇っている。この小さな鳥たちの運命か
ら、私たちが学ぶべきことは多い。並木道で青い鳥を
見かけたなら、彼らの歩んできた長い道のりを、どう
か思い起こして欲しい。