本棚の本
《水底のメロディー》
失われた古代人である『水底の民』たちは
曲を奏でることにより
様々な力を発揮したと伝えられている。
水底の民について記された文献によれば
彼らが使用していた、力を持つ曲の基本
フレーズは24種。
それぞれのテーマは
『的、技、忍耐、力、行進、隠者、鏡、生命、愛、
禊、炎、光、大地、水、風、闇、精霊、子守歌、
束縛、心眼、泥濘、刻、戸惑い、誕生』。
これらのフレーズは単体でも効果を発揮するが
24種を全て織り交ぜた『幻のメロディー』は
世界を終局から救う純粋なる調べとまで
いわれている。
これは私にとって、とても興味深い伝説だった。
音楽は、もともと不思議なものだ。
喜びも、怒りも、悲しみも、あらゆる感情を正確に
それを聴く者たちに伝達する。
古代の人々がメロディーの醸し出す効果を把握し
それを自在に操っていたとすれば
この伝説は、ただの寓話ではなかったことにる。
私は『幻のメロディー』を聴いてみたいと思った。
今に残る僅かな手掛かりを頼りに
力を持つ24種のフレーズは完成した。
再現したこの曲を
私は『水底のメロディー』と命名した。
だが、このメロディーを
悪用されはしないだろうかという危惧もある。
そこで私はフレーズごとに24種の石へと刻み
その石を共鳴石と名づけ
信頼のおける人々、或いは闇深き洞窟の奥など
世界のいたる所に隠すことにした。
共鳴石に反応する『魔法の地図』を一枚だけ作った。
その地図が悪しき手に渡らぬことを願いたい。
      レオーネ・フレデリック・リヒター