(詰碁の創り方) 第8回
塚本惠一 著 [詰碁世界第13号(2002年4月発行)掲載]


「後手最強」について本誌「詰碁世界」の「「創作詰碁応募要領」では次のように記しています。

手段が最強というのは、無条件かコウかなどの死活の結果で判断されます。本コウとヨセコウなどについては、コウを解決するまでの手数で判断されます。

1図 黒先
2図 正解
3図 失敗
1図の正解が2図です。黒1の手筋に白2のツギが最強の抵抗で白の取り番の1手ヨセコウになります。3図の白2では黒3以下黒の取り番の本コウです。

4図
5図
4図は正解の結果ですが、黒がコウを解決するには、コウトリ、アタリ、トリの3手かかります。5図は失敗の結果ですが、黒はツギの1手でコウを解決できます。後手の白にとって4図の方が5図より有利な死活の結果ですから、2図の白2が最強の抵抗になるわけです。
1図はシンプルな配置で初形は良いのですが、正解がヨセコウでは結果は今一つと思われる向きもありましょう。そこで6図の修正案も考えられます。

6図 黒先コウ
7図 正解
8図 失敗
6図は1図に黒1子を加えたものですが、その石があるので7図の正解が本コウになっています。こういう効果的な配置の変更を思いつくことが作図力の一つと言えます。それには数多くの詰碁を調べて筋と形の関係を身に付けておくことが大切ですし、自分が表現したい狙いを実現するために長時間試行錯誤を繰り返す粘りも必要です。私はアマの中では死活の読みは速い方ですが、プロにはとてもかないません。けれども、詰碁の案をひねくり回しながら考え続けることなら、1ヶ月でも続けることができます。天才という言葉がありますが、才能というより努力を続けられる資質のことと解すべきではないか、という気もします。学生時代は別にして、現実には生業で思考を中断されてしまうのですから、詰碁の案を書きとめておいて後で暇なときに調べ直すことをやっています。アマの詰碁作りはそんなやり方にならざるをえないでしょう。
閑話休題。7図は白の取り番ですから、白はあと1手でコウを解決できます。8図は黒の取り番ですから、白はコウの解決に2手かかります。従って7図の白2が最強の抵抗です。
しかしながら、一般のアマの解図(詰碁を解く)力が弱いことから、コウの取り番までは問題にしないという風潮があるのも現実です。本誌の解答審査ではその辺を甘くしているのですけれども、本来は全てを読み切っていると分かる解答だけを○にすべきものでしょう。
作図して出題する際はその逆で、コウの取り扱いなどで解答者を悩ませないように配慮すべきです。こう受ければコウの取り番になるから妙手、といった主張は解答者や鑑賞者に伝わりにくいことが多く、むしろ作品の評価を下げる場合もあるからです。



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