(詰碁に強くなる法第10回)「ツケコシの筋、ワリコミの筋、スソハライの筋」
塚本惠一 著 [詰碁世界第11号(2001年10月発行)掲載]


(ツケコシの筋)
ツケコシは実戦では切断や封鎖を目的とすることが多いものですが、詰碁では効きを生じさせるための捨て石に用いられます。

1図 黒先生き
2図 1図の解
2図の黒1と捨てておくことで1の2路右のアテを防ぎます。

3図 黒先生き
4図 3図の解
5図 つづき
3図はダメヅマリのために際どい手順になる面白い詰碁です。4図の黒1のツケコシが効きを増やす手筋ですが、白4でダメのように見えるので、打ちにくい手になっています。白4のときに黒5のハネが巧妙なシノギ筋で、黒7のアテを効かして黒9で2眼の生きです。5図の白8白10の方が最強の抵抗になるでしょうが、黒11黒13のホウリコミの連打で両コウです。

6図 黒先コウ
7図 失敗
8図 6図の解
6図はツケコシで取りにいくという珍しい問題です。とは言え、まずは狭める基本で7図の黒1から読むものです。7図の白2で凌がれるので、敵の急所は我が急所で8図の黒1を読んでみることになります。白2白4のとき黒5が白のダメヅマリをつく手筋で2段コウになります。

(ワリコミの筋)
捨て石の中でもワリコミの筋は鮮やかなものと言えるでしょう。ワリコミの筋は他の手がうまくいかないと読んだ後に、まさかワリコミ?という風に試して発見するものだからです。そういう風にワリコミに気付くのが遅いのは、むしろ基本通りに読んでいる証拠です。

9図 黒先白死
10図 9図の解
11図 失敗
9図は眼だらけに見えますが、10図の黒1ワリコミから黒3キリカエシが手筋で殺せます。11図の黒1切りは半分コウで凌がれるので失敗です。

12図 黒先
13図
14図
ワリコミの筋の代表例とも言えるのが12図です。妙味あふれる詰碁ですので、詳しく説明したいと思います。まず単純に狭める13図の黒aは白bで、黒cは白dで、黒eは白fで白生きです。そこで中からいく14図の黒1を考えることになりますが白2以下白6で凌がれます。

15図
16図
17図
中からいくなら15図の黒1の方が筋が良く、白2なら黒3で殺せます。詳細は後述します。ところが16図の白2と遠慮して受ける手があってコウに粘られます。この辺りまでを読んで、ようやく17図の黒1はどうか、と考えることになるものだと思います。それぞれの図を1、2分で確かめることができるならアマでは相当な腕前と言えるでしょう。プロ高段者の場合はその十倍以上速い感じです。閑話休題。17図の白2などでは黒3から黒5とポン抜いて、後を読むまでもなく、眼あり眼なしか花六になります。こういう形が死形であることを研究しておけば実戦にも役立ちます。

18図
19図
20図 白死
18図の白2がある意味で最強の抵抗です。これに対しては黒3以下黒7と1目を抜いてやはり花六の形です。ある意味と言うのは、13図~17図のような順で読んできた人にとって、ということです。17図の黒1が途中でひらめいた場合なら、19図の白2の方が悩ましく見えるはずです。黒は白2子を取りにいくしかありませんが、白6白8などに石がきて、オイオトシにされる形だからです。確かに黒3黒5は両方とも助かりません。実は20図の黒9の切りが打てるので9の左下は欠け眼で白死というのが結論です。本代は発陽論の作品を整理して作図したものです。


(スソハライの筋)
定石にも現れる2線のケイマのスソハライが広さを確保する筋として詰碁に用いられることもあります。

21図 黒先生き
22図 21図の解
23図 失敗
22図の黒1のスソハライで生きる広さを確保します。23図の黒1には白2から白4と渡られて殺されます。



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